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【特集・コロナ危機と大学】
コロナ危機と幼稚舎の対応/杉浦 重成

2020/08/06

2つの会議を新設

臨時休校が始まった3月2日以降、「学校が再開される場合の備え」や「新学期の授業や行事、活動等をどのように行うか」、「卒業式をどのように挙行するのか」が大きな検討課題となった。

そこで、舎内に「新型コロナウイルス感染症対策会議(以下、対策会議)」と「遠隔授業担任専科担当者会議(以下、担当者会議)」を新設した。

「対策会議」は舎長経験者、各校務分掌まとめ役、情報科担当、事務長、校医、保健師、主事、舎長をメンバーとし、主にウェブ会議で1学期までに計13回実施した。幼稚舎では本来、全教員が出席する「連絡会議」を最終決定の場としてきたが、臨時休校期間中は、この「対策会議」での取り決めを全体での決定とすることにした。この会議により、意思決定が効率よくなされ、迅速な対応が可能となった。対策や対応の立案には、校医や保健師の意見や助言が大きく寄与した。医学的な観点からのアプローチを基として、児童の「安全」と「健康」を守るための様々な検討と決定がこの会議を通してなされている。

「担当者会議」は、後述のiPad を用いた「遠隔授業」を行うにあたって組織された。各学年担任代表、各専科代表、事務長、主事、舎長をメンバーとし、こちらもウェブ会議を主として1学期までに9回実施した。この会議の目的はあくまでも調整である。児童に課題を配信するにあたり、それぞれの担当教員が勝手に課題を配信してしまうと、質や量ともに児童に大きな負担となることが予想された。各学年担任代表を「ハブ」として、配信される課題は、必ず担任代表のもとに全て集まり、質や量が調整された上で児童に配信することにした。また、児童や保護者の反応を知るためにアンケート等を実施し、児童の取り組み方や保護者の負担等を把握し、担当者同士が共有するように努めた。遠隔授業は4月から始めたが、児童や保護者の様子から5月上旬には量を減らし、現在も負担を考慮して継続している。

遠隔授業と「Zoom」

幼稚舎ではオンデマンド型の遠隔授業を4月9日より実施した。児童に配信する課題を国語や算数、社会を中心とした必修の「A課題」と専科中心の「B課題」とに分け、各学年担任代表が質や量を共に調整した上で1週間単位の課題を提示した。当初は「A課題」を終えた児童が自ら「B課題」に取り組めるようにと考えていたが、児童の様子を見て、次第に「B課題」にお楽しみの要素がある課題を配信することにした。絵画や造形に関連した課題に興味や関心を持ち、自ら取り組む児童が多数いたことは喜ばしいことであった。

幼稚舎では、2018年9月から児童1人に1台のiPad を所有させ、「文房具の1つ」として位置付け、国語や社会、情報のみならず、理科、英語、図書等でも使用してきた。このたび、児童が自分のiPadを有していたことが、遠隔授業を円滑に行うことに通じた。授業支援クラウド「ロイロノート・スクール」での課題の提出等にも大いに役立つことになった。

4月当初は児童や保護者の負担や時間的な制約を考えて実施していなかったが、4月末からビデオ会議システム「Zoom」を使って担任と児童が交流を始めたクラスがあり、5月半ばからは、オンライン型でクラス内の交流を図るため、自由参加の「朝の会」等を各クラスで実施するようになった。これは離れていても児童と幼稚舎が結び付く手立てとなり、クラスメートや教員とも交流が図れることに通じた。さらに現在では、「Zoom」を利用したオンライン型の授業を実施しているクラスもある。これは、保護者の手を煩わせることなく児童自らが機器を操作して参加できること、家庭の事情やITスキルの不足などを考慮した。児童や教員のスキルの習得を徹底し、段階的に進めた上での実施となっている。

7月31日までは「時差・分散登校」を実施するが、課題の分量を調整した上で遠隔授業も併せて継続している。

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