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【特集・コロナ危機と大学】
「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」の紹介/山澤 文裕

2020/08/06

  • 山澤 文裕(やまさわ ふみひろ)

    丸紅東京本社診療所長(産業医)・1981医、86医博 

中国武漢市で発生し、感染が拡大した新型コロナウイルス感染症(以下、本疾患)に関連したニュースが日本で報道されるようになったのは、本年1月初旬である。タイムリーに1月9日に開催された日本渡航医学会産業保健委員会(委員長:筆者)で、渡航に関連した医療全般を対象とする渡航医学会として本疾患について情報を発信していくべきではないか、と議論した。一方、早くも1月16日に日本国内で初の感染者報告があり、本疾患は対岸の火事ではなく、日本国内においても感染拡大が危惧されるようになった。

海外派遣企業からの問い合わせが徐々に多くなり、日本渡航医学会産業保健委員会として企業の人事担当者へ的確な情報発信に向け準備をしていたところ、日本産業衛生学会海外勤務健康管理研究会より、共同で情報発信をしたいとの申し出をいただいた。わずか3ページであったが「新型コロナウイルス情報―企業と個人に求められる対策―」をウェブサイトにアップしたのは、2月1日であった。それは、WHOが1月30日に本疾患を「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」と宣言したことを受け、政府が本疾患を感染症法に基づく「指定感染症」と検疫法の「検疫感染症」に指定した日であった。その後、緊急事態宣言の発出(4月7日)、濃厚接触者の定義変更などの状況を含め「新型コロナウイルス情報」の改定を繰りかえした。

4月後半に、日本渡航医学会と日本産業衛生学会の正式文書とし、タイトルを「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」に変更し、5月11日に46ページからなる第1版をアップした。緊急事態宣言発令期間中であったため、事業継続や従業員の職場復帰、給付金、賃金・休業手当関連についても触れた。5月25日に緊急事態宣言が全国で解除されたことを受け、6月4日に事業再開と中長期的対策を盛り込んだ第2版をアップした。従業員が感染者、濃厚接触者になった場合の会社としての対応、出張者や駐在員への対応、さらにテレワークとメンタルヘルス、株主総会開催の注意点、法的留意点など記載した。

人類に対する大きな脅威である新型コロナウイルス感染症への対策は、中長期的な視点で検討される必要があり、「対策ガイド」が塾員の皆様のお役に立てば幸いです。

詳細は日本渡航医学会  および日本産業衛生学会を参照ください。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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