三田評論ONLINE

【祝! 塾高野球部甲子園優勝】
【甲子園優勝に寄せて】塾高野球部甲子園優勝に思う

2023/10/11

  • 村田 作彌(むらた さくや)

    慶應義塾高等学校同窓会事務局長

令和5年8月23日。ついに107年振りの全国大会優勝という、世紀をまたぐ歴史的快挙の瞬間に立ち会う幸運に私達は恵まれました。居合わせた多くの人が涙を浮かべ、その感動に浸りました。アルプススタンドのみならずネット裏席、一般内野席そして外野席まで及んだ慶應社中応援団は一致団結して選手たちに声援を送り続け、そしてそれを受け止めるかのように塾高ナインはいつも通り、いやそれ以上の力を出してくれたかのようにみえます。

思い起こせば春の選抜初戦敗退という劇薬の効果は凄まじく、それ以降の塾高野球部は見違えるように変化を遂げ、大きく成長したようです。春季県大会決勝の相洋戦では11対0と完勝。そして夏の県大会第1シードとなったチームの力は素晴らしく、ほとんどの試合をコールドで勝ち進み、決勝横浜戦の逆転スリーランホームランへと繋がりました。

そして晴れて夏の甲子園。その間、塾高野球部に何が起こっていたのでしょうか。効率の良い練習に加えて、学生コーチやベンチ入りできない控え選手が様々なデータを洗い出していました。さらに2年ほど前から取り入れられたメンタルトレーニング、フィジカルトレーニングにより、個人個人の人間力が成長していったのだと思うのです。

また、失礼ながら、それ以上に森林監督が大きく変わった、一番成長したのではないでしょうか。優しい笑顔で包み込みながら野球に関してはなかなか強かな人であるとお見受けします。その自信が自然と選手に安心感を与え、自分たちの考えで動いているようでありながら、監督が思う方向に導いていったのではないかと思うのです。それが県大会決勝での逆転スリーランを呼び、甲子園の広陵戦での度々のピンチを乗り越え、さらに決勝戦では相手チームの疲れを見逃さず、キッチリ攻める野球で勝利を摑み取ったのでしょう。

大会後、日吉台球場を訪れ、よくこの球場で日本一になれたものだ、と感慨を新たにしました。強豪と言われる野球部の球場のほとんどは両翼100m以上、人工芝で立派なナイター設備があるのに対し、近所からクレームの出るくらいの砂地のグラウンド、手動式スコアボード……。世間の人たちのさぞかしすごい設備であろうという想像とは真逆で、ますます塾高野球部に肩入れしたくなる所以です。

最後に、社中応援団の一員として、森林監督、選手はじめ全ての関係者の皆様に感謝すると共に心より敬意を表し御礼申し上げます。ありがとう! 一層のご活躍を祈りつつ!

  • 1
カテゴリ
三田評論のコーナー

本誌を購入する

関連コンテンツ

最新記事