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【祝! 塾高野球部甲子園優勝】
【甲子園優勝に寄せて】生徒応援ツアーの舞台裏

2023/10/11

  • 首藤 聡史(しゅとう さとし)

    慶應義塾高等学校主事

7月26日、全国高等学校野球選手権記念神奈川大会決勝の横浜高校戦に勝利し、慶應義塾高校(以下塾高)の5年ぶりの夏の甲子園出場が決まった。その瞬間、灼熱の横浜スタジアムで阿久澤校長と私は固い握手を交わし、同時に「覚悟」を決めた。これから甲子園の生徒応援、学校対応など、多くのタスクと決断の連続が始まるからだ。春とは異なり、夏の甲子園はたったの10日で準備を進めなければならない。

塾高では県大会決勝終了後、初戦と決勝で学校主催甲子園生徒応援ツアーを企画すること、2戦目から準決勝までは生徒用アルプス席チケットのみ販売することを全校生徒に通知した。初戦の北陸高校戦は、生徒330名が学校主催甲子園応援ツアーに参加した。ただ、8月15日に予定されていた2戦目の広陵高校戦は台風7号の接近により生徒の安全を最優先とし、チケット販売を中止した。結果的に台風直撃で試合は順延、新幹線も大混乱となったが、生徒は巻き込まれずに済んだ。準々決勝の沖縄尚学高校戦は364枚、準決勝の土浦日大高校戦は821枚のチケット購入希望があり、勝ち進むにつれ甲子園への関心もどんどん高まっていった。普段クールな塾高生がこれだけ自主的にイベントへ参加するのは珍しい。決勝の仙台育英高校戦では600名のツアー募集を行ったが、それもすぐに定員となった。

野球部の活躍は塾高だけでなく、さまざまなコミュニティに感動を与え一体感を生んだ。普段お世話になっている東急電鉄日吉駅では甲子園の期間中、駅員の方々による温かい応援コメントが電光掲示板に掲載され、また優勝の瞬間には日吉東急アベニューで館内放送が流れ、店内からは歓声が上がったそうだ。そして、日吉キャンパスでは優勝が決まった午後には雨がやみ、空には大きな虹がかかっていたのだとか。

優勝後、多くの方から「優勝おめでとう」と「感動をありがとう」の言葉をいただく。野球部員が昨年、新チームになってから掲げた2つのチーム目標「日本一」「応援されるチーム」は、夏の甲子園で最高の形で達成できたのだと感じている。

改めて、野球部、應援指導部、吹奏楽部の部員及び関係者、教職員、日吉商店街をはじめ応援してくださった皆様に心からの感謝と「おめでとうございます」の言葉を伝えたい。

それにしても、部員の成長には目を見張るものがあった。試合のたびに逞しくなり、大人たちの想像を超える成長を続けた。甲子園優勝の瞬間までもっとも落ち着いていたのは、選手たちだったのかもしれない。

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