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【特集:変わるインドと日本】
座談会: 大国化するインドとどうつきあうか

2019/11/05

日印交流をより活発にするために

武鑓 私がインドにいるとき、インド人メンバーを10名ぐらい選び、日本から30歳前後の若手の優秀なエンジニアを10名連れてきて、インドで3週間一緒に研修するプログラムをつくりました。そして、研修中は日本人とインド人、2人の相部屋にしたのです。

朝起きると隣にインド人の同僚がいて、一緒にクラスルームに行って、英語でいろいろなディスカッションをし、夜は夜でチームに分かれて、ソニーの新興国戦略について議論させました。

日本とインドの同じ世代の同僚が、対等にそれぞれの経験や知識を共有しながら、戦略をまとめていくというプロセスは極めて重要だと思いました。インド人はよく喋りますが、日本人は黙って聞いている傾向があります。そういう中でいかにリーダーシップを発揮できるかが大きな課題だと思います。

竹中 アメリカ、カナダ、オーストラリアなどに留学すると、インド人学生がいっぱいで、学生寮ではインド人と相部屋の人が多い。でも、案外同じアジア人だからか仲がいいみたいです。

武鑓 インド人の考え方は、家族を大事にしたり、シニアをリスペクトしたり、どちらかというと、日本の昔よかった部分をどこか持っていて、結構そこは似通っているように思います。

二階堂 私はムンバイにある、中央銀行が設立した研究所に留学していました。2002年で印パ緊張のため日系企業は退避して、ムンバイにもほとんど日本人がいなかった時期でした。

個室のゲストハウスに6カ月いたのですが、日本人の留学生が珍しいというのもあってか、ホームシックにならないぐらい、毎日、誰かしら話しにやって来る(笑)。

神田 大事にしてくれますよね。ファミリー待遇になって。

二階堂 留学の時のネットワークで、今も一緒に研究をしたりと、皆、世界中に散らばっているので、とても恩恵を受けています。やはり絆を築くと非常に強いと感じますね。

この8月には学生を連れてコルカタに行きました。コルカタは、日本との関係も深く、知識人が多く、ノーベル賞受賞者も出している地域です。

おなかを壊した学生もいましたが、ゴミ処理場や太陽光発電の倉庫などを見せてもらい、ジャダプール大学で学生同士が交流したり、日系のタタ日立さんに伺ったり、総領事からお話を伺ったりで、本当に学生が毎日成長していく姿が見られました。

帰ってきて、どうだったと聞くと、「ぐちゃぐちゃで何が何だか分からなかった」という答えが返ってくる。豊かな人も貧しい人もいるし、上手く答えが見つからないけれど、本当に視野が広がったようですね。

竹中 アメリカの大学や研究機関、IMFや世界銀行などの国際機関も、インド系の経済学者が多い。インドはグローバルな存在感を増しています。

政治学としては、「モディ政権の行方がやや不透明なので、成り行きを注目しましょう」というコメントになりますが、これからの日本や世界にとってインドは欠かせない存在になります。もっといろいろな方が日印の関係を切り開いていってほしいですね。

神田 私のゼミの卒業生は、卒業して数年間、日本のいくつかの企業で働いたのち、一念発起して、今インドでMBA取得を目指して猛勉強中です。研究職を目指して学生時代に留学したり、就職してインドに駐在するだけではなく、新しい形でのインドとの関わりが生まれているようにも思います。語学留学先としても選ぶ若者も増えているようですし、今日はお話しできませんでしたが、文化・芸術面での交流も様々なチャンネルが生まれています。

予定時間をずいぶんと超過してしまいました。話が尽きないというのもインドの魅力でしょうか。本日は、有り難うございました。

(2019年9月20日収録)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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