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【特集:サステナブルな消費】
座談会: SDGs実現のために 消費をどう変えていくか

2019/08/05

「商店街の文化」の復活を

蟹江 でも、やはり僕らの世代の男性はあまり家庭科などでそういうことを習っていないので、知識がないと思うんですよ。

岡村 エシカル商品についてアンケートを取ると、やはり4、50代の男性は一番知識がないんです。例えば環境にいいものを選ぶ際、若い人は同じ値段だったら男女とも絶対エシカルなほうを買うと答える。でも、4、50代の男性はそうではない。

髙橋 その年代のおじさんたちはそもそも買い物をしないんですよね。でも、私は逆なんです。うちのかみさんはバリバリのキャリアウーマンなので、買い物とか料理は全部私がする。だから、私はやたらとスーパーに行って買い物をするんです。

私の仲間は結構「専業主夫」が多いんですよ。最近ちょっとずつ世の中は変わってきていると思います。保育園では、子どもを送りに来るのは、8割がお父さんでした。

岡村 社会はそうやって変わっていく。だから、共通目標はよりサステナブルな方向へと向かうのは間違いないと思います。

冨永 あと消費者の声として私が言いたいのは、お肉のプラスチックのプレートです。あれ、要らなくないですか。

髙橋 要らないです。

岡村 ゴミを増やすだけですね。

冨永 すごく邪魔でかさばるし。だから、私はいつも袋だけで売っているところで買うんですよ。そのほうが少しだけ安いですし。

髙橋 本当は量り売りにして、1つの大きい容器に入れて、持ち帰れるようにしてくれたほうがゴミも減るし、必要な量だけ取れるみたいな仕掛けのほうがいい。スーパーの人たちにそう言っているんですが、なかなか実現できませんね。

蟹江 商店街のお店はお皿を持っていって、「ここにちょうだい」というところもありますよね。

冨永 そちらのほうがずっといいと思います。

髙橋 ぜひ、それは消費者側がお店に言ってほしいところですね。スーパーも、バックヤードで肉を切っている人たちに声を掛けると喜んでいろいろなことをしてくれるんですよ。「もっとこういう肉ないの?」とか言うと、喜んで切ってくれる。現場の人たちも声を掛けてほしがっているのです。

冨永 もうちょっと壁をなくしてしまえばいいんですね、

岡村 そういうお店がニューヨークでもパリでもハイエンドですよね。マルシェに行って会話してという感じ。

髙橋 ヨーロッパは町中にマルシェがありますものね。

蟹江 商店街の文化を復活させるというのもいいかもしれないですね。

冨永 私は商店街が好きです。友達になっていろいろ話もできるし。時間はかかるんですけど、やはりすごくいい文化ですよ。

「正しい消費」の時代へ

蟹江 今日の議論でいろいろな課題が出てきたし、今後やるべきことも見えてきたかと思い ます。

岡村 消費者庁というのは今までの縦割り行政ではなく、人々の暮らしのためにできた新しい役所です。以前から消費者運動というのはあるんですが、今後は普通の人たちが普通の暮らしをするために消費のことを考えるべきです。日本の社会自体が変わったんですね。

価格とか見栄えではない、本当の価値が大事になってきています。お金を使うときは、責任を持って使っていきたいという、「正しい消費」が重要になっているのだと思います。

髙橋 そうですね。私も正しい消費ということが基本だと思うんです。「安物買いの銭失い」みたいなものが今、いろいろな弊害を生んでしまっている。ストーリーをきちんと踏まえて消費行動をすることがこれから求められていくし、情報発信をきちんとして、正しいものを売る企業が選ばれていく時代になると思うんですよね。

冨永 そうですね。企業の人たちが思っているよりも、消費者たちがそれを求めていると思います。

岡村 その通りですね。消費者のニーズを先取りし、商品やサービスを開発し、環境負荷軽減の努力をして、事業を通じて健康、安心で豊かな社会の実現に貢献する企業が選ばれていくのだと思います。それが先ほども言いました消費者志向経営です。

蟹江 なるほど。結局、「SDGsをしっかりやりましょう」という感じですね。

岡村 そうですね。そしてそういった意識をしっかり持った若者に社会の中核を担っていただければと。若者が輝けるような未来にしなければと思います。消費の未来というのはこのサステナブル消費なんです。生産の未来も「サステナブル」にあります。

大学に期待するところも大きいのです。大学は、そういったことを議論できる場がつくれますよね。

蟹江 フラットに議論できるのは、やはり大学のいいところだと思います。われわれも、xSDGラボという研究ラボラトリーを昨年から立ち上げて、その中で企業や自治体と協働するためのコンソーシアムも作りました。こうした仕組みを使って、研究をベースにSDGs実施の好事例や基準づくりをしていきたいと考えています。

冨永 SDGsということをどう掲げるか、どう示すかというのはすごく大事だと思うので、そこは協力していきたいと思っています。

蟹江 是非宜しくお願い致します。今日はお忙しい中、有り難うございました。

(2019年6月14日収録)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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