【特集:サステナブルな消費】
座談会: SDGs実現のために 消費をどう変えていくか
2019/08/05
重要な情報提示の仕方
岡村 企業経営者の方たちは、ライフスタイル自体を、より持続可能な社会のために、という姿勢で考えてくださればと思います。いろいろな選択肢を出していただいて、それが分かるようなプラットフォームも必要ですよね。
私たちは少なくとも分かるところから正しい情報に基づいて、自分なりに納得する判断をしたいと思います。
冨永 無責任な消費はしたくないですね。今、やはりそういった情報があまり見えないですよね。
髙橋 逆に情報が溢れてしまっている面もありますよね。いろいろなポップやマークや表示が氾濫していて、どれが本当に意味があるものなのかを判断しづらいこともあると思います。
蟹江 「優とん」という表示は、この前、髙橋さんに聞いて初めて意味が分かりました。
冨永 優とんとは何ですか?
髙橋 エコフィードという余ってしまった食品を安全性や品質を担保した形で餌にして、それを食べて育った豚肉を、小田急グループは「優とん」というネーミングで売っているんですね。
蟹江 優良なのかな、とか思ってとりあえず買ったりすることはありますが、もう少し分かりやすくしてもらいたいな、というのはありますね。
髙橋 整理は必要だと思います。
冨永 もうSDGsのマークを付けるのでもいいと思うんですけどね。
蟹江 食品ロスは法律もできたし、これからいろいろなことができるのではないですか?
髙橋 そうですね。われわれは、どうしても出てしまう食品廃棄物から、堆肥化をしたり飼料化をして、そこで育った野菜やお米、豚肉などを「リサイクルループ」という循環の仕組みをつくって、継続性の高い世の中にしたいと思っています。できればマークを統一して、そういったものを、消費者に選んでもらうことで持続可能な世の中に貢献したいと思うのです。
蟹江 例えば、レストランでも、食品ロス削減ミシュランみたいに、食品ロス削減に貢献していて、かつおいしい店が分かればいいのかなと。
冨永 それ、いいですね(笑)。
髙橋 今、ちょっと食べにいくと、3000円〜5000円ぐらい掛かるけれど、ちゃんとしたものを食べられる外食産業がすごく伸びている。そういった店のシェフからも、エコフィードの豚肉はすごくいいねと言ってもらって、使い始めてくれています。
一方、スーパーの豚肉の格付けで、どういうものがいい肉かというと、いかにスライスがしやすいかとか、いかに見栄えがいいか、いかに歩留まりがいいか、というのが上物なんです。
冨永 歩留まりって何ですか?
髙橋 要するに肉がいっぱい取れることです。脂がたくさんあると肉があまり取れないので、それは歩留まりが悪いと言われる。でも消費者が求めている、安全性やヘルシーさ、おいしさというものは格付けには一切反映されないんですよ。
冨永 消費者側の基準ではないのですね。
髙橋 流通しやすい、売りやすいという観点からの格付けなのです。よく農家の人たちが、「本当はこれを食べてもらいたいんだけど、卸しが買ってくれないから自分たちで食べてしまう」と言う。これは豚肉だけではなく、野菜や果物でも往々にして起きていることで、そういう意味では、情報提示の仕方も工夫の余地があると思います。
ネット社会の購買行動
蟹江 冨永さんは、食べ物を買うのでも服を選ぶのでも、何か自分なりの基準みたいなものはあるんですか。
冨永 食品に関しては、基本的には無農薬のものを選びます。また、「安ければいい」というものはやめています。
蟹江 ちゃんとしたところからちゃんとしたものを買うということですね。
冨永 そうですね。あと裏の原材料表示は必ず見ます。
岡村 女性の場合は、裏を見るのはほぼ全員じゃないですか。
蟹江 うちの妻も、一緒に行くと遅いんですよ。ジーッと見ている(笑)。
冨永 そうそう。時間かかるんですよ。
岡村 私は、消費者庁に来てから勉強のために行くことにしていますが、あまり食品をスーパーで買わないのです。インターネットで売っているものだと自分で確認できますよね。
髙橋 今、スーパーも安かろう悪かろうという傾向にどんどんなっていて、牛肉でも豚肉でも、海外から輸入にしたほうが安くていいと、なってしまっている。日本の生産者の人たちは、スーパーに卸すのをやめようかという動きもあると聞きますね。
岡村 ネット社会になって、ダイレクトに買う人が多くなったんですね。
髙橋 そうですね。いいものを直接買ってもらいたいので、自分たちでネット販売をしたり、直売所をつくる動きが出てきています。
蟹江 そうすると、その間の流通で出ていたCO2も削減できる可能性もありますね。
髙橋 そうですね。だから、消費者も直接生産者から買ったほうが、生産者も利益になるし、消費者も安くリーズナブルに顔が見えるいいものが手に入る。これからそういう形になっていくのかなと思います。
冨永 私も食品に関してはインターネット注文が主です。そこで足りないものはスーパーに行くという感じです。
岡村 働く女性は、夜中に確認したいということもあるので。若い世代は仕事もしながら、いろいろ折り合いをつけて、ということが多く、なかなか夕方スーパーに行くことができませんから。
蟹江 女性の社会進出と、もうリンクしているのですね。
2019年8月号
【特集:サステナブルな消費】
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