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【特集:日本人の「休み方」】
フランスの休み方と「つながらない権利」

2019/04/05

年次有給休暇は1年30労働日

ヴァカンスは長期の年休です。それでは、この長期の年休が、労働法によってどのように可能になっているのかを見ていきましょう。

労働者は、契約期間・労働時間・勤務期間にかかわりなく、年休の権利があります。2018年の法改正前は、同一の使用者に10日間勤務していることが年休の取得要件でしたが、その要件はなくなりました。

法定の年休は、フルタイムであれ、パートタイムであれ、同一の使用者の下で1カ月につき2.5労働日、1年30労働日(5週間)取得できます。フランスでは、土曜日は労働日とされますので、平日の25日間年休をとることができます。年休の起算期間は、一定の職業を除き、原則6月1日から翌年5月31日です。

労使協定等により、法定年休よりも有利な年休の計算をすることができます。企業協定等により、年齢・勤務期間・障がいを理由に年休日数を増やすことができます。また、労働者に子どもがいる場合は年休が加算されます。2015年の調査によると、年休及び労働時間短縮に伴う休暇の日数は、平均33日となっています。

年休可能期間は、企業協定等により、それがない場合には使用者によって決められますが、5月1日から10月31日までの期間を必ず含まなければなりません。つまり、ヴァカンス時期を含むことを義務づけています。年休日数が12労働日以下の場合は、分割することはできません。年休日数が12労働日を超えるときは、労働者の同意を得て分割できますが、少なくとも継続12労働日を取れるようにしなければなりません。

年休取得において、家族に配慮した規定があります。年休を一度に取得する場合には、24労働日が上限となっていますが、子どもや障がい者や介護を要する高齢者のいる世帯である時などは、使用者はより長い年休を認めることができます。また、年休開始に関して、使用者は、労働者の「家族の事情」等を配慮することも義務づけられています。「家族の事情」というのは、配偶者や連帯市民契約(結婚に準ずるパートナーシップ)のパートナーの年休の可能性、子どもや障がい者や介護を要する高齢者がいることをいいます。もし、労働者の配偶者や連帯市民契約のパートナーが同じ会社に働いている場合は、労働者は同じ時期に年休を取る権利があります。

さらに注目すべきことは、学校の休暇を全国3つのゾーンに分けてずらして決めていることです(コルシカ島は特別の日程)。

フランスの年休制度は、長期に取ることができ、家族でヴァカンスに出かけられるように配慮されていることがわかります。そして、何よりほとんど100%の年休が消化されます。

万人にヴァカンスを

ヴァカンスを可能にしているのは、年休制度だけではありません。ソーシャルツーリズムという運動があります。これは、所得の低い人にも旅行を楽しんでもらおうという運動です。フランスは、1948年から始まる「観光近代化計画」によって、国民が安い費用でヴァカンスを楽しめるように低廉な施設を整備しました。キャンプ場、休暇家族の家、農村民宿などが整えられました。

また、「ヴァカンス小切手」という制度があります。労働者がレジャーやヴァカンスに使える小切手を額面以下で購入して使用する制度です。差額は労働者の使用者または企業委員会(50人以上の企業に設置が義務づけられ、労使から構成される。企業経営の諮問を受けたり、福利厚生及び文化活動のために使用者が提供する資金の管理を行ったりする)が払います。

労働者が負担する費用は、その所得に応じて割合が決まっています。低所得者の負担割合は低くなっています。子どもがいれば、さらに負担割合は軽減されます。現在、フランス国内のみならずEU域内の20万カ所でヴァカンス小切手が使用できます。

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