三田評論ONLINE

【特集:慶應義塾の国際交流】
大串 尚代:慶應義塾の国際化の現状

2024/10/07

多様な単位取得・学位取得のあり方

現在、国際化の要となる言語は英語が主流であり、英語を共通言語として、多様なバックグラウンドを持つ学生が一堂に介して学ぶことが可能となっている。本塾では英語で学ぶことができる授業が幅広く開講されており、国際センター講座もその一部である。このほか、経済学部ではプロフェッショナル・キャリア・プログラム、商学部ではグローバル・パスポート・プログラムが展開されており、体系的な研究を英語で履修することが可能である。また全塾プログラムであるグローバル・インターディシプリナリー・コースでは、将来的に英語を活用するキャリア形成にも役立つ内容となっている。

英語のみで学位が取れるプログラムは、2011年に開設された総合政策学部・環境情報学部によるGIGA(Global Information and Governance Academic)プログラムと、2016年に開始された経済学部のPEARL(Programme in Economics for Alliances, Research and Leadership)があり、グローバルな視野を広げたいという学生が国内外から集まっている。大学院では英語のみで学位取得が可能なプログラムを有しているのは、経済学研究科、商学研究科、医学研究科、理工学研究科、政策・メディア研究科、健康マネジメント研究科、システムデザイン・マネジメント研究科、メディアデザイン研究科、法務研究科の9つの研究科におよんでいる。

学位取得のあり方も国際化によって変化している。本塾と海外の大学の協定により、それぞれの大学から学位を授与されるダブルディグリー制度は、2024年5月現在、2つの学部、8つの研究科において合計30のプログラムが運用されている。中でも、理工学研究科はアーヘン工科大学、スウェーデン王立工科大学、エコールサントラルグループを含む12ものプログラムを有している。また、経済学研究科、商学研究科、メディアデザイン研究科が参加している国際経営学修士(CEMS MIM)プログラムは、世界でもトップレベルの大学と企業、NGOが連携して運営する学位プログラムであり、これに参加できるのは各国1校のみとされ、日本からは本塾が参加し、グローバルに活躍するための研究・実践が行われている。

日本からの発信

グローバル化や国際化というと、海外志向という側面がすぐに思い浮かぶが、一方で本塾が位置する場所、すなわち日本の言語文化、歴史、社会に関する教育や情報発信も重要である。本塾では第2次世界大戦後まもない昭和33年から、慶應外国語学校内において日本語教育が始められた。その後国際センター日本語科を経て、1990年に日本語・日本文化教育センターが設立された。このセンターを中心に留学生たちが日本語や日本文化を学んでおり、その意味では日本語・日本文化教育センターは本塾の国際化における要のひとつであると言えよう。海外で学ぶだけではなく、海外から来る人々に日本語や日本文化を広く伝達することで、相互理解が可能となるだろう。

同様の慶應からの発信は、FutureLearnのオンライン講座の活用にも表れている。FutureLearnは大学や教育機関の講義をオンライン上で受けることができる、いわゆるMOOCs(Massive Open Online Courses)のプラットフォームのひとつである。本原稿執筆時点で、「日本の近代化──福澤諭吉の格闘」「大学ミュージアムにおける創造的『空き地』の実践」「古書から読み解く日本の文化」「人口の高齢化──日本に学ぶ『健康長寿』」などをはじめとした13のコースが開講されており、さまざまな国や地域の人々が慶應の授業を楽しみながら受講している。

留学を希望する学生への経済支援

最後に、本塾が行っている、留学を希望する学生への支援についてふれておきたい。国際センターで行っている派遣交換留学に対して、本塾では慶應義塾大学交換留学生(派遣)奨学金および東京俱楽部国際交流奨学金による経済的支援を実施している。

派遣交換留学が開始されてから半世紀以上経過した現在、留学をはじめとした国際化のあり方もまた多様化している。その中で海外経験を通じて塾生に何を学んでもらいたいのか、またそのために義塾が何を提供できるのかを考え続ける必要があるだろう。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

カテゴリ
三田評論のコーナー

本誌を購入する

関連コンテンツ

最新記事