【特集:薬学部開設10周年】
「医工薬コモンズ」を通じた塾内共同研究の推進
2018/10/05
慶應義塾と共立薬科大学との法人合併を通じて薬学部が最も期待したことの一つは、塾内共同研究による研究活動の活性化である。「医工薬コモンズ」は2010年、理工学部の谷下一夫教授(当時)を中心として、医学部、理工学部、薬学部の連携により情報交換を図り、学部を超えた慶應発の学際的融合研究を創出するために設立された組織である。
2010年は合併間もない時期であったため、医工薬コモンズへの参画は、薬学部が総合大学の一員となった果実を嚙みしめることのできる瞬間であった。現在は、慶應義塾大学先導研究センターの一つとして、センター長の医学部 貴志和生教授と、理工学部 須藤亮准教授を中心に三学部教員の協力的体制によって運営されている。
主な活動は、4カ月に一度、「医工薬コモンズインキュベーションラウンジ」と銘打った医工薬連携シンポジウムを開催することである。医学部、理工学部、薬学部はそれぞれキャンパスが別であるが、3キャンパスを1年に一度ずつ巡回する形で、回を重ねてきた。来年3月には20回目の開催を迎える予定である。毎回、各学部から1名ずつ、若手教員あるいは時には大学院生にもご講演いただくことで、トップダウンではなく、ボトムアップ型での学問的交流を進めることができたと自負している。
各学部からの講師に加えて、ほぼ毎回、研究連携推進本部、慶應義塾大学病院臨床研究推進センターや、JSR・慶應義塾大学医学化学イノベーションセンター(JKiC)の先生などにも活動内容をお話しいただくことで、共同研究の推進や研究費の獲得にも実践的に取り組んできた。実際、薬学部からは現在、金澤秀子学部長、漆原尚巳教授、登美、および長瀬健一准教授がメンバーとして参画しているが、いずれも医学部あるいは理工学部との学部間共同研究を積極的に推進している。
さらに、講演をした教員同士でも学部横断的な新たな共同研究が生まれたことが多く、研究費の共同申請や獲得にもつながっていると聞いている。研究面だけでなく教育面においても、学際的な高度人材を養成するため、大学院教育における連携を目指したカリキュラムの提案も行ってきた。総合科学である薬学において学際研究は必須であり、塾内研究 連携に向けた活動を今後も発展的に進めたい。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。
2018年10月号
【特集:薬学部開設10周年】
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三田評論のコーナー |
登美 斉俊(とみ まさとし)
慶應義塾大学薬学部薬剤学講座教授