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【特集:NPOの20年】
座談会:今、あらためて問うNPOの役割

2018/11/05

「新しい公共」をめぐって

宮垣 さて、民主党政権時代の「新しい公共」の政策はいろいろ言われるのですが、私はきちんと検証すべき点が多々あると思っています。この政策に大きく関わられた金子さんはどういう思いがあるのでしょうか。

金子 私は鳩山由紀夫さんと3年間一緒にスタンフォード大学博士課程にいたので仲がいいのです。いろいろなアイデアは非常にたくさんある人です。

しかし、悪気があるわけではないのだけれど、着地点を最後までちゃんとやるということはしない人だと分かった(笑)。そういう意味では少し残念だなという感じがしています。

萩原 「新しい公共」事業というのは、今後100年は出てこないだろうと言われた金額が全国に配分されましたよね。私は神奈川県の事業に関わりましたが、それぞれの県でマネジメントにばらつきはあったようですが、あれによってNPOという存在を日本全国に知らしめたのは大きかったと思います。

金子 それはそうですね。

萩原 やはりNPOはまだ基盤が弱いですから。

宮垣 そうなんですよね。私も兵庫県で関わりを持っていたのですが、印象深いのは、それまでだったらNPO単体で支援してきたところを、規模が大きいものだから一団体だけではちょっと手をあげづらい。

萩原 だから連携・協働事業でやったんですよね。

宮垣 そうです。地域を巻き込んでやろうとか、ちょっと枠組みを変えたという効果はあったと思うのです。金額の大きさが利いているわけですね。

同じ地域でもお互いに接点がない団体が、「一緒にやりましょうよ」という形でセットアップすることでコミュニケーションが生まれたりする。だから、狭い意味でのNPOを、地域も含めて広げたということは評価しなければいけないと思います。

金子 そういう意味では「新しい公共」は大きな貢献はしたし、今日のお話の何割かはそこでいい土台ができたのではないかと思います。

クラウドファンディングからのつながり

宮垣 山田さんは資金の獲得についてもいろいろな問題意識をお持ちだと思います。NPOの持続可能性を考えたら当然、資源、お金の問題は避けて通れない。昨今の状況についてどう見られていますか。

山田 やはり資金調達の上手い団体が生まれてきたと思いますし、いろいろなITサービスを使えるようになったので、コストが下がってきたということもあります。例えば昔だったら会報誌を印刷して郵送していたのが、今は上手い団体は、例えばグーグルがやっているような無料のNPO向けのサービスなどを上手く活用し、コストを抑えて活動しています。

後はクラウドファンディングを上手く活用し、いろいろな方から広く資金調達をしている団体さんも増えてきています。

宮垣 クラウドファンディングも、初めの頃は注目されたので、割と集まりやすかったと思うのですが、今は皆がやるので競争が激しいのではないでしょうか。

山田 でも、パイとしてはまだそんなに大きくないので、プロジェクトの数も金額も大きくなっています。クラウドファンディングがいいのは、それをきっかけに自分たちの支援者を見つけることができるところです。

一度支援してもらった人には、次は例えばマンスリーサポーターとして月額寄付で応援していただく形に移行する形もある。きっかけをクラウドファンディングでつくり、そこから継続して関わってもらう取り組みを積極的にやられているところもありますね。

宮垣 そこがカギですよね。「一度出してもらったら終わり」というのではなくて、どうやって自分たちの仲間につなげていくのか。

山田 そうですね。つながりを生み出すことが重要になってきます。

例えばクラウドファンディングで支援してくださった方が、次はボランティアで関わってくれるかもしれない。東日本大震災などでも初めに寄付で支援してくれた人が、復興段階で現地に観光に来てくれたりする。そういうつながりを生み出すところがありますので、NPOの皆さんの工夫のしがいがあるのかと思います。

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