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【特集:脱オフィス時代の働き方】
コロナ禍のテレワークと働き方の変化

2020/12/07

  • 大久保 敏弘(おおくぼ としひろ)

    慶應義塾大学経済学部教授

感染症予防対策としてのテレワーク

当初、テレワークは労働時間や場所を柔軟にできることから働き方改革の一手として注目され、徐々に浸透してきた。こうした中、2020年、新型コロナウイルス感染症が蔓延し、人と人との接触をさけることができるテレワークが感染症の拡大を防ぐ有効な手段として注目されるようになっている。感染症対策と経済活動との両立は難しく、仕事についてはテレワークの推進が呼びかけられている。緊急事態宣言解除後、再び出勤が増えたものの、テレワークはある程度、定着し浸透しており、我々の働き方が徐々に変わりつつあるようである。本稿では慶應義塾大学大久保敏弘研究室とNIRA総合研究開発機構との共同プロジェクトである「テレワークに関する就業者実態調査」を基に働き方とテレワークの現状を見ていく。

都心部を中心に急速なテレワークの利用拡大と通勤からの解放

就業者実態調査の結果によると、全国の就業者のうちテレワークを利用した人の割合は、1月時点では全国平均わずか6%だったが、3月時点では10%に上昇し、緊急事態宣言が出された4~5月は25%に上昇した。宣言解除後の6月時点には17%に低下したものの、宣言前の3月時点に比べて7ポイントほど高くなっており、テレワークが定着してきているようである(注1)。

都道府県別に見ると(図1)、6月の利用率は高い順に東京都33%、神奈川県27%、埼玉県23%、千葉県23%であり、東京圏の利用率が高い。東京都心部でテレワークの利用が進んでいる背景には、感染者数が多く積極的に政府がテレワークを呼びかけた結果だけではない。そもそも、オフィスワークがメインである本社機能や中枢機能が東京に集中しており、情報通信業などテレワークに向くサービス業種も東京に集中するなど、企業組織や産業立地も大きな要因と考えられる。

図1 都道府県別テレワーク利用率(居住地ベース)拡大して表示

さらに通勤時間の面から東京圏での利用率を見る(図2)。片道30分~100分ほどの通勤者のテレワーク率の伸びが大きいことが分かる。郊外に居住し都心部に勤務している人が利用する傾向にある。通勤による苦痛がそもそも大きい上に、交通機関内での感染リスクも高いため、テレワークの利用が大きく進んでいるようである。また、郊外の場合、都心に比べて居住空間が広く、テレワークのスペースが確保しやすいことも要因だろう。今後、郊外からの電車通勤は少なくなり、テレワークにある程度置き換わる可能性がある。したがって郊外におけるサテライトオフィスなどテレワーク拠点の官民連携による整備が急務となるだろう。

図2 通勤時間別テレワーク利用率(東京圏内、公共交通機関利用者)拡大して表示

業種・職種による格差

テレワークには不向きな業種があり、業種による格差が大きい(図3)。6月時点で、利用率が高い順に、通信情報業(50%)、情報サービス(45%)、金融・保険業(30%)となった。

また、低い方をみると、運輸業(10%)、医療・福祉(5%)、飲食・宿泊業(4%)となった。緊急事態宣言時の4~5月では情報サービス、通信情報業が60%前後にまで上昇し、金融・保険業も40%を超えた。これらはもともとテレワークに対応しやすい産業であり、6月に入っても高い利用率を維持しており、ある程度テレワークが定着したものと思われる。一方で、飲食・宿泊や医療・福祉は1月時点で低かったがその後も低迷したままだった。

図3 業種別テレワーク利用率 拡大して表示
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