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【特集:脱オフィス時代の働き方】
中小企業におけるテレワークの課題と対応

2020/12/07

  • 杉山 達郎(すぎやま たつお)

    オフィス ア ライト代表、社会保険労務士・塾員

筆者は社会保険労務士として、中小企業に対し経営・人事労務分野でアドバイスを行っている。その中でいろいろな相談を受けるが、新型コロナウイルス感染症の流行が拡大して以降、テレワークに関する相談が急増してきた。

今回は、そのような相談を踏まえ今後テレワークという働き方がどのようになっていくか、中小企業はどんな課題があり、どう対応していくべきか、特に大企業との比較を念頭におきながら考察する。

テレワークの現状

総務省の調査によると、テレワークの導入率は、平成23(2011)年では9.9%であったが、年々増加し、令和元年には20.2%となった(図1)。さらに、今回の新型コロナウイルス感染症の影響により、一気に導入企業が増加した。母集団が異なるため単純に比較はできないが、株式会社東京商工リサーチの調査によれば、全企業でみると一時期57.8%(「現在、実施している」+「新型コロナ以降に実施したが、現在は取りやめた」)が、テレワークを実施し、緊急事態宣言解除後においても、まだ31%の企業が継続している(図2)。

しかし、企業規模による格差は大きく、資本金1億円以上の企業では最大84.9%が実施していたのに対し、1億円未満の企業では、52.4%であった。

また、緊急事態宣言解除後に、一部テレワークの中止や実施日数の削減を行っている企業がある。中小企業では半数がテレワークを取りやめて、コロナ前の通常勤務に戻していることから、中小企業におけるテレワークのハードルは相対的に高いと言える。

図1 テレワークの導入状況 拡大して表示
出典:「令和元年通信利用動向調査の結果」(総務省)
上記資料のP.18
図2 新型コロナによるテレワーク実施状況 拡大して表示
出典:「第6 回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査」(株式会社東京商工リサーチ)
上記資料のP.4をもとに筆者作成

テレワーク及び働き方改革の今後

それでは、次にテレワーク及び働き方改革の今後を考えてみたい。

今私たちは、新型コロナウイルスによりこれまでにはない生活を経験している。例えば、テレワークの導入で、今まで当たり前だと思っていた満員電車による通勤や会社での長時間勤務などがなくなり、家庭で家族と過ごす時間が増えたという人も多いと思われる。

このような生活の変化は、個々人の価値観、特に働くことに対する価値観の変化をもたらす。例えば、今までは「会社や仕事があって自分がある」という関係性であったとすると、今回の大きな変化を受けて、そこに疑問が生まれてきている。本当は自分があって、会社や仕事があるのではないかと。このような疑問を持つ人々は今着実に増加している。

テレワークについては、今年6月に実施されたNIRA総研「第2回テレワークに関する就業者実態調査報告書」によると、46%の人が新型コロナウイルス終息後にテレワークを実施したいとし、現在テレワークを利用している人では、80%がテレワークを継続したいと答えている。

このように、今まで働き方改革と言われてもピンとこなかった人たちも、実際に生活の変化を体感することで、自分事として考えるようになってきている。その結果、働き方改革は新型コロナウイルスを機に、今後大きく進んでいくはずである。

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