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【特集:ジェンダー・ギャップに立ち向かう】
ジェンダー・ギャップ指数に見る男女の雇用格差

2020/04/06

  • 権丈 英子(けんじょう えいこ)

    亜細亜大学副学長、経済学部教授・塾員

世界経済フォーラムが2019年12月に発表した「ジェンダー・ギャップ指数」では、日本は153カ国中121位に位置づけられた。本稿では、ジェンダー・ギャップ指数のうち、働き方に関わる経済分野の指標を中心に確認しながら、日本の労働市場の課題を述べ、どのように取り組むべきかを考えていく。

ジェンダー・ギャップ指数とは

ジェンダー・ギャップ指数とは、世界経済フォーラムが、各国の男女間の格差を数値化しランク付けしたものである。経済、教育、健康、政治の4分野について合計14指標の男女差を算出し、0が完全不平等、1が完全平等を意味する。経済分野は次の5指標であり、( )内は、日本の順位を示す。

Ⅰ  経済活動の参加と機会(115位)…労働力率(79位)、同様の仕事における賃金の同等性(67位)、勤労所得の推計値(108位)、管理職に占める比率(131位)、専門職に占める比率(110位)

ちなみに、「Ⅱ 教育の到達度」は91位、「Ⅲ 健康と寿命」は40位、「Ⅳ 政治的エンパワーメント」は144位であり、日本は政治分野、経済分野の順位が低くなっている。特に男女差が大きかったのは、閣僚(139位)、国会議員(135位)、そして管理職に占める比率である。

「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度になるよう期待」するという目標が、すでに2003年に男女共同参画推進本部により掲げられ、2005年12月には第2次男女共同参画基本計画において閣議決定されている。だが、残念ながらその取組みは鈍く、指導的地位に占める女性の割合が現在も低いことが確認される。

経済分野での主要国比較

ここで、経済分野のジェンダー・ギャップ指数について、主要国と日本とを比較しておこう(図表1)。取り上げるのは、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスの4カ国と、この指数が第1位であったアイスランド、労働市場や社会保障に関して注目されることの多いスウェーデンである。

紙幅の都合上、主要3指標のみを取り上げる。まず労働力率の男女差を見ると、日本のスコアは0.814であり、7カ国中で最も低い。スコアに換算する前のデータによれば、労働力率〔=(就業者+失業者)/15~64歳人口〕は女性69.8%、男性85.8%であり、スコアは69.8/85.8で得られる。

日本の女性の年齢階層別労働力率のグラフは、結婚・出産年齢で落ち込むM字型をしていたが、出産前後で継続就業する女性の増加と、少子化や出産時期の分散により、徐々に落ち込みが解消されてはきた。しかし、日本はまだ男女差がかなり大きいことになる。対照的に、アイスランドやスウェーデンの男女差はほぼなくなっている。

2つ目は、男女の賃金格差に関する指標である。ジェンダー・ギャップ指数では、男女間賃金格差を直接測定した指標ではなく、世界経済フォーラムの「エグゼクティブ意識調査」より、「あなたの国で、同様の仕事について、女性の賃金は男性の賃金とどの程度等しいですか」(「1=男性の賃金とは全く等しくない」から「7=男性の賃金と完全に等しい」までの7段階評価)の回答に基づくものである。

例えば、日本のスコア0.672は、この評価の平均値が4.71であることから、これを指数化するために7で除して算出されている。ここでも、第1位のアイスランドのスコアは0.846と評価が高い。他方、最も低いのは127位のフランスで、0.528と厳しい評価である。

ちなみに、OECDによれば、フルタイム労働者の中位所得における男女間賃金格差は、フランスは13.0(2015年)であり、スウェーデンの7.3(2017年)よりは大きいが、イギリスの16.4(2018年)、ドイツの16.2(2017年)よりもやや小さく、日本の24.5(2017年)よりもはるかに小さい。ジェンダー・ギャップ指数では、男女間賃金格差を直接測定したOECDなどのデータではなく、調査対象の国数が多いことなどから「意識調査」が利用されている。この点については、留意しておくとよい。

3つ目の管理職比率では、日本のスコアは、0.174であり、管理職に占める女性の比率(以下「女性管理職比率」)は14.8%と低い。7カ国中で最も高いアイスランドは、0.708で、女性管理職比率は41.5%である。なお、この指標で第1位のフィリピンは、女性管理職比率が52.7%と、管理職は男性よりも女性が多い。

図表1 ジェンダー・ギャップ指数(経済分野の指標を中心とした順位)
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