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【特集:NPOの20年】
NPOの人材育成

2018/11/05

これからのNPO人材に求められる力

北米と日本のNPO教育や人材育成の状況をふまえて、これからのNPO人材に求められる力とは何か考えたい。社会人基礎力やコミュニケーション能力、マネジメント力など一般的な力は必要である。さらに、NPO人材に特徴的な力として、以下の4つが挙げられる。

  • ・NPOが掲げるミッションへのコミットメント・共感力・市民性
  • ・倫理性・誠実さ・信頼
  • ・主体性、レジリエンス(強靭さ・回復力・折れない心)
  • ・多様な人材や文化の受容力・包含力

NPOの人材育成に何が必要か

筆者が、次世代を担うNPO人材の「赤字(deficit)」の議論を米国で聞いたのは約10年前。ベビーブーマー世代の大量退職などで、人材不足と言われていた。日本でも、他セクターとの賃金格差などの諸要因により、NPOで働く人材は赤字の状態が続いている。では、日本の未来を担うNPOの人材が黒字化するにはどうすればよいか。

NPO・大学・行政・企業などが連携してできることとして、持っているリソース(人・モノ・カネ・情報・専門性・ソーシャルキャピタル)の洗い出し・持ち寄り、ニーズとのマッチングが挙げられる。また、セクターを越えた多様な団体が社会的課題や解決策に関する対話や議論を行うこと、そのためにも、セクターを越えた人材交流・人材移動を促進することも効果的であろう。NPOにとっては、成果を出しミッションを実現するためには、人材マネジメント・育成の価値を認識し、そこに投資することも重要である。小規模でその予算がない団体が協力して積極的にスタッフに研修を受けてもらったり、キャリアステージや団体規模に合わせた多様な人材が交流する機会を設けるといった方策も求められる。

また、そもそも、NPOに関わる人材のすそ野を広げるにはどうすればよいか。若い頃や学生時代にボランティア活動の経験があると、社会人になっても参加する傾向がある。すなわち、教育の力が大きいのである。大学はもちろん、より早い段階でボランティアやNPOに触れる機会を増やすことが肝要である。

例えば、沖縄尚学高校・附属中学校では、全校生徒がボランティア活動を行い、市民性・人間性を育んでいる。こうした取り組みが、長期的には次世代を担うNPO人材のすそ野の広がり・育成につながっていくだろう。

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