【特集:ソーシャルメディアと社会】
松尾 剛行:ソーシャルメディア法務の実務──情報プラットフォーム対処法施行下におけるアカウント凍結対応を例に
2025/10/07
Ⅲ おわりに
以上簡潔にソーシャルメディア実務を、アカウント凍結対応の観点から述べてきたが、一部の個別の内容はともかく、情報プラットフォーム対処法の趣旨自体は非常によいものである以上、今後の運用、特にアカウント凍結の運用においてその趣旨を十分に反映した実務が積み重なることを強く期待したい。
〈註〉
*1 松尾剛行= 山田悠一郎『最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務』(勁草書房、第二版、2019年)
*2 なお、情報プラットフォーム対処法については、学習院法務研究において今年度中に「情報流通プラットフォーム対処法施行下における名誉毀損・名誉感情侵害等に対する手続法的対応(仮)」という論稿を公表予定である。
*3 なお、この内容は後述の情報プラットフォーム対処法への改正後も実質的な変化はない。
*4 選挙とソーシャルメディアについては、放送倫理・番組向上機構「放送人権委員会 近畿地区意見交換会を開催 「SNS時代の選挙報道 局の垣根を越えて議論」」2025年2月3日(https://www.bpo.gr.jp/?p=12337)、松尾剛行「選挙と政治に関するAI - SNSにおけるディープフェイクを中心に」「情報社会における社会的側面からのトラスト形成」(韓国釜山研究会 2025年2月21日)、および、松尾剛行「「AIの悪」たる選挙の文脈でのディープフェイクを中心とした偽情報と民刑事対応──名誉毀損、業務妨害罪を中心に」「情報社会における社会的側面からのトラスト形成」(日韓釜山研究会2025年7月25日)参照。
*5 松尾剛行「プラットフォームによるアカウント凍結等に対する私法上の救済について」(情報法制研究10号、2021年)66頁以下。その他、松尾剛行『サイバネティック・アバターの法律問題』(弘文堂、2024年)168頁以下及び松尾剛行= 髙田晃央「プラットフォーマーをめぐる法律関係」インターネット事件実務研究会『事例大系インターネット関係事件──紛争解決の考え方と実務対応』(ぎょうせい、2025年)284頁以下所収参照。
*6 上記のとおり、筆者自身も対象者を代理してコンテンツモデレーションを要求することもある。
*7 成原慧= 松尾剛行「AIによる差別と公平性 ──金融分野を題材に」(季刊個人金融2023年冬号)11頁参照。
*8 ハルシネーションの可能性を踏まえて人間の確認が必要等と論じた、松尾剛行『生成AIの法律実務』(弘文堂、2025年)492~493頁参照。
*9 但し、実際に物理的にサーバ上から削除されなくても、当該投稿が閲覧できなくなれば、問題となる投稿の送信はされないことから、侵害情報送信防止措置が行われたとされることに留意されたい。
*10 同号ではなく同項1号に関するものであるが、「「できる限り具体的に」(法第26条第2項第1号)大規模特定電気通信役務提供者が策定する、送信防止措置の実施に関する基準は、「できる限り具体的に」(法第26条第2項第1号)定められるべきである。具体的には、法律用語のみならず、世間一般で用いられている表現を用いて、誹謗中傷、海賊版、自殺などのカテゴリ別に明快に記述すべきである。」とする特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律における大規模特定電気通信役務提供者の義務に関するガイドラインⅢ・1も参照。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。
2025年10月号
【特集:ソーシャルメディアと社会】
カテゴリ | |
---|---|
三田評論のコーナー |