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【特集:日本の“働き方”再考】
大西利佳子:プロ人材を活用する組織、プロになれる人材

2023/02/07

  • 大西 利佳子(おおにし りかこ)

    株式会社コトラ代表取締役・塾員

人が変わると組織が変わる

私は慶應義塾大学経済学部を卒業後、日本長期信用銀行(現・新生銀行)に入行しました。戦後、産業界に長期資金を提供する目的で設立された同行は長銀という略称で呼ばれ、戦後の経済成長を支えた存在でしたが、株式市場や金融業界の変化に伴い役割が変わりつつありました。経営者も職員も自己変革をしようと懸命に努力をしていましたが、なかなか変わり切ることができずにいました。しかし、25年前の金融業界におきた業界変革の中で株主が変わり、新しい人が入ってきた瞬間に大きく組織は変わりました。当時、本部の企画セクションで組織の改革の一端を担うことに奮闘していた27歳の私は「組織というのは人そのものだ。人が変わると組織が変わる」と実感し、人材ビジネスに関心を持ち、銀行を辞めて起業して今年で20年になります。

プロ人材を採用するために必要なジョブ型人事制度

私が経営している株式会社コトラはプロフェッショナル人材ビジネスを手掛ける会社です。祖業であるプロ向けの人材紹介業のほか、HRDX(人事のDX)や人的資本の情報開示、HRビジネスパートナーの教育・派遣を含めた人的資本コンサルティングを行っています。組織の生産性と人の付加価値の向上に貢献することを理念として事業を行っている会社です。

我々の祖業である人材紹介というサービスは、事業の発展を考えるビジネスリーダーが外部から人材を採用しようと考える際に取る手段の1つです。事業と組織を率いるビジネスリーダーは、組織を発展させるための強化策を考えます。それはⅯ&Aかもしれないし、制度の変更かもしれないし、人材の育成や人材の採用かもしれない。そして、いくつかの強化策の中で人材採用という手段を取る場合にも、新卒採用や中途採用の強化などいくつかの手段があります。中途採用強化といっても未経験者を採用する場合と、その道のプロを採用する場合ではだいぶ考え方も実行方法も違います。

新卒を含む未経験者を採用する場合には、組織全体の魅力を語ること、たとえば、会社のミッション、ビジョン、バリューや教育制度を含む福利厚生などで魅力付けをすることができますが、プロ人材の場合にはそれだけでは採用することはできません。中途採用でプロ人材を採用するためには、まずやってほしい仕事のミッションと仕事内容を言語化し、それに必要な人材像とスキル要件を定義し、その仕事の報酬を決めて、募集を行います。必要な人物像が定義できたら、その仕事をしている人たちをリストアップして声をかけ、面接でその人物の能力を見極めつつ、その人たちに対していかに自分たちが素晴らしいことを成し遂げようとしているか、そしてその仕事はどんなものか、いかに報酬が見合っているかなどについて説明しなければなりません。

これは最近話題となっている「ジョブ型」人事制度そのものです。したがって、プロフェッショナル採用をしようとすると必然的に「ジョブ型」の人事制度を導入することが不可欠となります。

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