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【特集:脱オフィス時代の働き方】
子育て期のテレワーク促進がもたらす地方都市の可能性

2020/12/07

テレワークがもたらすキャリアの継続

未就学児の育児期間は、朝の子どもの体調によって、当日の動きが変更を余儀なくされる状況です。保育中の昼間、子どもが起きる前の早朝や、子どもが寝てからの時間を総動員することで働く時間を捻出することになります。

私は、雇用型テレワークではなく、パターン3の自営型テレワークに特化してサポートしていますが、仕事の要件・仕様が決まっていること、活用するクラウドツールを発注側が使いこなせていること、報酬体系・委託契約が妥当であること、バックアップ体制が整うことで、子育てと働くことの両立ができると考えています。

クラウドソーシングの案件は、仕事の要件・仕様が曖昧、報酬体系・委託契約に配慮がないパターンが見受けられます。テレワークが在宅のみで行われるのではなく、地域のコワーキング拠点での雑談を通じて、ちょっとした不安を当事者同士で解消していくケースをよく目撃します。また、お互いのスキルやパーソナリティを補完できるパートナーとの出会いがあることで、受注単価を上げていけるようになっていきます。

子どもの体調やメンタルが不安定な期間、親からのサポートを受けられない期間、夫が働くことに理解がない期間などは、週1日、月5,000円の働き方を行い、状況が整ってきたタイミングで週3日、月3万円の働き方をしていく人がいます。子育て期にこの微力を積み重ねていくことが、本格的な復職時の選択肢を増やすことにつながっています。ある人は個人事業主を継続し、ある人は正社員として復職し、ある人は非正規雇用で復職し、ある人は地域のいろんな複業を組み合わせて働いているかもしれません。子育てをしながら、安心して復職できる実感が持てることで、2人目の子どもを望む人も多くなります。ゆるやかで、すそ野が広く、グラデーションがある働き方が実現されることで、地方都市の出生率の向上にも寄与することになるでしょう。

テレワーク導入による人材確保

子育てという不確実性の高い状況でも、クライアントに価値を提供できる仕事を納品するためには、むしろ発注側の発注スキルが大切です。地域の雇用はもちろん中小企業が9割近くを担っていますが、属人的で、会うことを前提とした仕事をしている企業が多い気がしています。

ウェブがインフラ化した今、地域企業においてもウェブサイトを活用することによる売り上げ増加、コストダウン、人材確保には伸びしろが残されています。しかし、そこに対応できる人材が都市部に住んでいるため、推進スピードが遅いのが現状です。

地域の事業者にとって人材確保は喫緊の課題であり、その解決手法としてテレワークを導入し、月1回のオンラインミーティング、月3万円程度の仕事を発注できるようにしていくことから始めると良いと思います。テレワーカーに発注する仕事の要件・仕様を特定し、活用するクラウドツールを社内チームが活用し、報酬体系・委託契約が整えられれば、すぐにでも始められます。

コロナ禍を通じて、地域企業においても、やれば案外、テレワークもできるのではないかという感覚は持てているので、組織風土として活用していく段階になってきています。実際に、テレワークセンターMINAKAMI では、コロナ禍(2020年4月~10月)においてワンタイム利用者が2019年度の利用者の3倍程度となり、2020年4月にオープンしたワークテラス佐久は会員が30名を突破しました。そのうち、何人かは暮らしの拠点を地方都市に移行し、東京に週1程度通うようなスタイルの人も現れてきています。

地方での複業案件を提供できる企業には、コロナによる地方都市への移動傾向も相まって、都市部からのテレワーカーとの出会いが提供されます。結果として、地域にはないビジネススキルを持った人材を活用でき、お互いの相性が良ければ、そのまま複業社員としての雇用も可能です。それらの結果として、子育て期、介護期、ガンなどの疾病からの療養期などのライフイベント離職を予防できる社内体制が整っていくのだと思います。新規人材採用と、現社員の離職予防が実現されることで、地域企業の人材確保につながります。

地域政策としての子育て期のテレワーク実装

女性活躍推進系の政策は、都道府県が担っている場合がほとんどですが、地域性を加味するうえで、基礎自治体の政策としても取り組むと良いと思います。子ども子育て課ではなく、商工振興課や地方創生を担う課が担当すべきです。ある程度のテレワーク案件を地域企業が生み出せるようになることで、都市部の複業・テレワーク解禁による関係人口を地域に呼び込み、移住者を増やし、さらには都市部企業のサテライトオフィス進出が見込めますし、安心して復職できる地域になることによる2人目出産の増加、子育て世代の移住も見込めます。

具体的には、遊休公共施設をテレワーク・コワーキング拠点として改修し、子育て期の女性に対するテレワーク支援、地域企業への複業案件創成を軸にし、運営していくと面白いと思います。地域の産婦人科と連携することで、出産後間もない女性へのアプローチも可能となるでしょう。また、子連れコワーケーションに対応するためにも、ゲストハウス的な機能とも連携できているとなお良いです。

私も、みなかみ町のテレワークセンターMINAKAMI、佐久市のワークテラス佐久、高崎市の取り組みを通じて、地方都市におけるテレワーク導入の価値を実証していきます(写真)。女性を支援するのではなく、地域を良くするために経営者と女性と行政が協働するための舞台装置を構築してまいります。

テレワークセンターMINAKAMI  https://tw-g.org
ワークテラス佐久 https://www.3saku.com

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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