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【講演録】反グローバル主義とポピュリズム政治

2019/08/09

  • 竹森 俊平(たけもり しゅんぺい)

    慶應義塾大学経済学部教授

昨今、反グローバル主義とポピュリズム政治に関する話題がメディアを騒がせています。本日は、福澤先生の時代から今日までの民主主義の流れを展望し、近年のポピュリズムについて考えてみます。3幕の物語です。

ポピュリズム政治とは?

そもそも、ポピュリズムではない「正常な」政治とは何か。私は「代理政治」だと考えています。つまり、国民が自ら政治を行うのではなく、プリンシパル(依頼人)となって信頼のできるエージェント(代理人)を選び、彼らに政治を行う権限を委任する政治形態です。裏返せば、ポピュリズム政治とは、エージェントに拠らずプリンシパルが自ら政治を行う、あるいはプリンシパルが政治的決断を自ら直接下しているような感覚(幻覚?)を抱く政治です。

近現代のポピュリズム政治には、3つの特徴が見られます。1つ目は、「反エリート主義」。「エージェント抜きで政治をしよう」ということですから、当然、エリートに対する大衆の不信が根底にあります。2つ目は「ナショナリズム」、これはトランプ大統領の「アメリカ・ファースト」やイギリスのブレグジット(Brexit)に端的に示されています。そして3つ目が、「反グローバル主義」です。

本日は、グローバル化、エリート(反エリート)、ナショナリズムという3つのキーワードに着目し、第1次大戦前、両大戦間期、および第2次世界大戦後を通じて、この3つの要素がどのように絡み合い、今日のポピュリズム政治につながってきたかを考えようと思います。

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