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【特別記事】メルケル首相、塾生と語る

2019/06/12

   

〈訳注〉
*1 父母手当(Elterngeld)は、2007年1月1日施行の「父母手当と父母期間に関する法律」に基づき、一時的離職や勤務減少にあたっての生活水準の激変緩和と、女性のみが離職を迫られることが多い中での両性の平等を実現する目的で、子の出生から12カ月間、所得の減少に対する補填を行うもの。夫婦で申請する場合、またひとり親の場合は14カ月間まで認められる。所得に応じ、手取り所得額の65〜100%の範囲で支給される(ただし最高限度は1800ユーロ)。前年の課税所得が25万ユーロ(父母両方の申請の場合は合計50万ユーロ)を超える場合は対象外となる。
*2 福島第一原発の事故後、第2次メルケル政権は原子炉安全委員会に加えて、社会学者や哲学者、キリスト教関係者らもメンバーに含む「安全なエネルギー供給のための倫理委員会」を立ち上げた。ドイツ国内のすべての原発を総点検させた結果、原子炉安全委員会からは安全との結論を得たが、倫理委員会は原発の利用継続には問題ありとした。メルケル首相は後者の結論を重く見て、福島事故3カ月後の6月6日に脱原発を決めた。
*3 資源エネルギー庁の2030年に向けての電源構成比率では、2016年現在2%の原発比率を22〜20%に増やすとしている。一方、再生エネルギーは同15%を22〜24%とするとしている。
*4 ヨーロッパには各国の電力の取引を行う共通市場があり、発電過剰地域から発電不足地域に、その都度電力を融通している。これによって自然条件により発電量が変動する自然エネルギーの効率的利用も可能となっている。
*5 温室効果ではCO2の25倍とも言われるメタンの世界全体の発生源の37%が牧畜によるものとされ、ドイツ環境省の2013年の発表では、メタンの排出の54%、笑気ガスの77%が農業由来であるという。
*6 ドイツの3大通信大手(Deutsche Telekom, Vodafone Deutschland, Telefonica Deutschland)は5Gへのファーウェイ導入を要望しており、2月初めにドイツ政府はファーウェイを市場参入から排除しない旨の発表をした。しかしこれにはNATO加盟国、特に米国からの批判が高まっている。
*7 サヘルは、アフリカのサハラ砂漠南部を東西に走る半乾燥地帯のこと。本文中の3カ国にチャド、ブルキナファソを加えたサヘル西部に位置する計5カ国は、2014年にG5サヘルと呼ぶサミットを開始した。
*8 西バルカンとは、欧州連合未加盟の旧ユーゴスラビア諸国5カ国(ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、マケドニア、モンテネグロ、セルビア)にアルバニアを加えた6カ国のこと。
*9 既存のEU条約の改正条約として2009年に発効したリスボン条約の42条7項は、武力攻撃を受けた加盟国がある場合,これに対し国連憲章51条に基づく援助・支援を行う義務を加盟国に課している。
*10 2015年11月13日にパリで起こった同時多発テロの後、フランスはEU史上初めてリスボン条約の42条7項を発動し、援助を要請した。フランスがイラクやシリアでのいわゆる対「イスラム国[IS]」作戦に注力できるように、ドイツはフランスが西アフリカのマリにおいて展開中の国連平和維持活動を肩代わりする目的で、650名の増派を行った。これはドイツ政府の既定方針であったが、この条項発動により決定が後押しされた。
*11 インダストリー4.0は2011年にドイツ政府が発表した「第4次産業革命」の将来型産業構造プロジェクト。第1次産業革命を水力と蒸気機関、第2次のそれを電気によるベルトコンベアー生産、第3次をデジタル化とすれば、第4次はすべての物の動きをデジタル化したうえでインターネットで結合するというもの。
*12 EU一般データ保護規則(GDPR、General Data Protection Regulation)は、EU域内の規則を統合し、市民と居住者が自らの個人データをコントロールする権利を保障する目的で2018年に発効した。氏名、住所をはじめ、あらゆる個人情報を対象とする。
*13 2016年3月16日に、EU=トルコ間の条約が発効し、それまで30億ユーロだった難民処遇のためのトルコへの資金援助が60億ユーロに増額された。これにより、違法にギリシャに渡った難民はトルコが引き受け、EUは合法的な難民申請者だけをトルコから受け入れることとなった。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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