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【特集:「排外主義」を問い直す】
毛受 敏浩:人口減少と外国人受入れ──共生政策の課題と展望

2025/12/05

  • 毛受 敏浩(めんじゅ としひろ)

    関西国際大学客員教授・塾員

人口の歴史的転換点

日本は今、急速な人口減少と在留外国人増加という歴史的な転換点を迎えている。

総務省が毎月発表する人口統計によれば2025年4月1日現在(確定値)の日本人の年間の人口減少はすでに前年同月比で94万人を超えており、現在のペースでは2026年の内に年間の日本人の減少が100万人に達すると思われる。

一方、外国人の増加数はコロナ禍の時期を除けば、日本人の減少の約4割を補うペースで急増を続けている(表1)。国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研)の「令和5年将来推計人口」によれば、2070年には外国人が総人口の10.8%を占めるとされて予測されたが、現実の増加ペースはそれをはるかに上回っている。2024年末時点で在留外国人は約377万人となり、1年間で約36万人の増加となった。今後の外国人の年間の増加を30万人と少なめに見積もったとしても、20年後には600万人増と考えられ、現在の在留外国人数とあわせれば2040年代には1000万人に到達する可能性は極めて高い。

表1 日本人と外国人の増減
(各年の「在留外国人数」(出入国在留管理庁)及び「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(総務省)から筆者作成)

外国人の増加は政策の結果ではなく、激減する日本人の働き手を補うために生じており、それを抑制すれば日本社会が機能不全に陥ることが想定される。またこの変化は2040年代で終わるわけではなく、社人研の推計では日本の人口減少は22世紀まで続くとされる。

この人口構造の大変化は日本社会の制度設計、文化的受容、教育、福祉、政治に至るまで多層的な影響を及ぼす。定住する外国人(移民)を想定した日本の未来を構想することが必然となる。なお、本文において「移民」は国連の定義に基づき、1年以上日本に在留する外国人を指す。

外国人労働者の現状と構造的課題

2024年末時点で370万人を超える在留外国人のうち、外国人労働者数は230万人(2024年10月現在)に上る。表2は2014年と2024年の各産業における外国人労働者の割合(〇人のうち〇人が外国人)を示したものでこの表を作成した加藤真はこれを「外国人依存度」と呼ぶ。

表2 各産業における外国人労働者の割合
(三菱UFJ リサーチ& コンサルティング、加藤真氏作成(出所)。総務省「労働力調査」、厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ」をもとに試算)

この表の通りあらゆる産業において外国人依存度は急激に高まっているが、それは日本人の働き手の減少を反映したものである。日本人の働き手の減少を止めるすべがない以上、将来にわたり外国人依存度も高まらざるを得ない。女性や高齢者の活用はすでに長年にわたり続けられており、その余地が大きいとはいえない。AIやロボットの活用に期待する声もあるが、それらを研究・製造し、また保守点検する人材も国内では足りていないのが現状である。

すでに多くの産業分野で外国人労働者は不可欠な存在となっているが、雇用の安定性には大きな課題が残る。令和6年賃金構造基本統計調査によれば、一般労働者の平均賃金が月額330,400円であるのに対し、外国人労働者の平均は242,700円と外国人労働者が若い世代に多いことを考えても大きな格差がある。専門・技術分野でも292,000円と全国平均を下回る。

さらに、非正規雇用の割合が高く、派遣・請負労働が17.3%、日系ブラジル人では51.2%に達する。30年以上前に創設された「定住者」資格を持つ日系ブラジル人の2世も、親世代と同様に派遣・請負の雇用から抜け出せていない。

これらの事実は日本の多くの企業は従来、外国人労働者を日本人が採用できない際のやむを得ない代替と考え、また景気の調整弁とみなしてきたと考えられる。しかし、人口減少が加速化している現在、そうした見方を180度変える必要がある。彼らに適切な日本語教育と職業訓練を行うことで、中堅から幹部へ続く道筋をたどらせなければ人材不足によって企業の将来が絶たれてしまうことになる。

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