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【特集:青少年とスポーツ】
女子アスリートの思春期からの教育・支援

2020/03/05

体育会女子部員 健康と生活のアンケート調査

2018年度に体育会OGでもある大学院健康マネジメント研究科修士課程の学生(当時)、谷麻也夏さんとともに取り組んだのが、「体育会女子部員 健康と生活のアンケート調査」である。運動量や食事などの生活状況、月経異常、月経に伴う症状、PMS、けがの既往などの健康状態について実態を把握し、今後の支援に活用することを目的とした。谷さん自身の強いモチベーションもあり、体育会所属の女子選手36部495名のうち33部421名の協力を得て実施することができた。関連各位に感謝申し上げる。結果の一部を図2に示した。

例えば月経痛が部活を含め生活に支障がある者が6割以上であるが、婦人科受診経験のある者は4分の1、月経調整経験者は1割に満たない状況であった。生活面では、全体的に食事量が少なめであること、特に朝食の主食が不足しがちであること、魚・豆なども不足しがちであることが分かった(詳細はスポーツ医学研究センターHP http://sports.hc.keio.ac.jp/ja/news/2019/10/post-12.html を参照)。正しい情報を選手や指導者に活用できる形で発信していく必要がある。

図2「体育会女子部員 健康と生活のアンケート調査」より
図2「体育会女子部員 健康と生活のアンケート調査」より
図2「体育会女子部員 健康と生活のアンケート調査」より

まとめ

体が成熟してくる思春期、自分の体の変化を受け入れてマネジメントしていくこと、生活習慣の基礎を身に付けることがアスリートとしての成功および今後の人生の中でも重要である。卒業後のことを考えると、20〜40歳台女性の運動習慣が極めて低い現実に直面する。仕事・子育てほかワークライフバランスを自分なりにとっていけるよう、思春期からの女性アスリート教育・支援を考えていく必要があるし、社会規範、競技規範を変えていく必要がある。また、学校スポーツにおけるゴール設定をどこに求めるかも重要な課題だろう。

(参考文献)

De Souza MJ, Nattiv A, Joy E, et al. 2014 Female Athlete

Triad Coalition Consensus Statement on Treatment and Return to Play of the Female Athlete Triad: 1st International Conference held in San Francisco, California, May 2012 and 2nd International Conference held in Indianapolis, Indiana, May 2013. Br J Sports Med. 2014;48 (4): 289-289.

能勢さやか他「Health Management for Female Athletes ver.3─女性アスリートのための月経対策ハンドブック─ 2018」(2020年2月1日アクセス)
須永美歌子『女性アスリートの教科書』主婦の友社、2018年 厚生労働省「平成30年国民健康栄養調査の結果」( 2020年2月1日アクセス)

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