三田評論ONLINE

【三人閑談】
和室の手ざわり

2025/10/15

モバイル茶室の挑戦

保科 10月19日の連合三田会で、日吉キャンパスの来往舎にモバイル茶室をつくりお茶会をします。宮大工の方に来てもらい、当日朝から待庵を模した二畳の茶室を建て、「在釜」を掛けますので、是非いらしてください。

松井 素敵ですね!

久保木 モバイル茶室の畳は決まっていますか? 熊本の田んぼで獲れた日本で一番良いイグサがあります。

松井 すごい。日本一のイグサとはどのようなものですか?

久保木 何よりも丈夫なことです。長持ちしてささくれになることがありません。そして、きれいに日焼けします。

2年前に埼玉県深谷市の旧渋沢栄一邸にこのイグサを使った畳を納めました。最近見に行ったところ、とても美しく日焼けしていました。良いイグサは身が詰まっているのでとても柔らかい仕上がりになります。

松井 それはぜひ座ってみたい。良い畳は座り心地も違いますね。ふかふかしていて足がしびれにくく、お昼寝するにも最適です。

保科 モバイル茶室にも是非入れてほしい…(笑)。

連合三田会では、組立ての過程もお見せするので、木組みの技や建築の軽やかさ、素材の味わいといったことも楽しんでいただけます。林業三田会の方々にも協力していただき、各地にある「慶應の森」の間伐材を提供していただけることになりました。将来的には「慶應の森」の間伐材を使った茶室をご提案できたらいいなと思っています。

久保木 素敵なストーリーですね。

保科 木材の由緒も一昔前は無節無垢の銘木であることが茶室の価値になっていました。サステナブルであることが目指される今の時代は、廃棄されてしまう材を積極的に活用することに意義があると思うのです。宮大工さんの目で良い素材を取り出していただき、「文化銘木」として使っていければと考えています。

松井 面白いアイデアですね。

保科 モバイル茶室は移築できるのでぜひ皆さんにも使っていただきたいのです。最近、慶應の仲間たちと日本橋人形町の古民家を使って「藤袴」という文化サロンを始めました。そのスペースにも二畳のモバイル茶室を実際に入れてみました。

久保木 どんどん広がりますね。

保科 今年3月には羽田空港国際線ターミナルの羽田エアポートガーデンで大々的に披露しました。日本の文化をアート作品として提案する企画だったのですが、インバウンドの方だけでなく、日本の皆さんからも反響がありました。

久保木 それはすごい。是非コラボレーションしたいです。大工さんが現地で茶室を組み立て、久保木畳店の職人が畳表を縫う、というパフォーマンスはいかがでしょう。

松井 私も友人や日本民家再生協会の人たちに声をかけましょう。

保科 いいですね! みんなでやりましょう。

2025年9月4日、三田キャンパスにて収録

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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