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【三人閑談】
ゴルフは生涯スポーツ

2023/05/25

ゴルフで大切なリスペクト

戸張 ゴルフ人口(ゴルフコースでプレーしたことのある人口)は、生産性本部のデータでは、560万人という数字が出ている。バブルのときは1000万人いたんです。でもコロナで少し増えてきている。

早川 ゴルフ練習場の延べ利用者数で言うと、バブル期は優に1億人を超えていたのが、2018年には8600万人に下がってしまった。でもそこからまた増加に転じ、2021年には1億人台を回復しています。

戸張 慶應もこれだけOBがいるんだから、本当はアメリカの大学のようにどこかにゴルフ場の1つぐらい持っていてもいいよね。それもパブリックでいいゴルフ場を作って慶應の卒業生が優先的にスタートがとれて、一般の人たちもプレーができるという。ゴルフ界に役に立つような。

ゴルフってものすごく人間性を問われるゲームなんです。人からリスペクトされることが大事。人が見ていなくてもスコアは正しく書くとか嘘をつかないことが原点なんですね。

宮里 私も最近よく感じるんですが、プロ競技ももっとスポーツマンシップというところを大事にしていかなければいけないと思うんです。

今、女子プロゴルフ界が盛り上がっていてとても華やかで、若いうちからすごくお金を稼げる競技になっている。でも、同伴競技者がいるスポーツなので、相手を讃え、終わった後はお互い頑張ったねという、そのリスペクトがすごく大事になってくると思います。

若手の選手の優勝インタビューで、競って負けた相手に対して掛ける一言が最近少ないような印象を受けているので、もう少し視野を広く持ち、一緒に戦った人に対してのリスペクトを大事にしよう、というメッセージを発信していきたいです。

一生楽しめるスポーツ

戸張 宮里さんはリタイヤを決めた時は、結構時間をかけて考えたのですか?

宮里 結構考えました。最初に引退の文字がちらついたのは29歳ぐらいの時なので、そこから引退するまでに3、4年かかったと思います。

戸張 それは自分のゴルフをしながら、ちょっと違ってきたなと?

宮里 そうでしたね。やはり最初はフィジカル面での変化を28歳ぐらいから感じ始めました。思うような動きができないことが少しずつ出て、あと、ちょっと疲れやすいなと。対策は26歳くらいからしていたつもりだったんですが、なんとなく上手く嚙み合っていかなくなる。

あとはやはり勝つことに対しての意欲、モチベーションが以前ほど強くなくなってきたということです。モチベーションが高くないと、練習も100%できなくなる。これでは勝てる世界ではないので。

自分が7割とか6割ぐらいのモチベーションでやろうと思ったらたぶんできるんですが、それがいいのかどうかというところでしたね。

早川 僕らから見ると引退が早すぎたなと。すごく残念でしたよ。

宮里 そう言っていただき、有り難うございます。

もう全然、自分の感覚では戦えていなかったので。これで日本に帰ってきたとしても、たぶん同じことが起きると感じていました。

戸張 でも六甲国際カントリー倶楽部での引退した試合の最後の18番。よくあのパット入れたなと。

宮里 入れましたよね。あのアプローチは本当に下手過ぎてびっくりしたんですけれど(笑)。

戸張 あれは見ていてジーンときましたね。最後のホールのアプローチがあまり上手くいかなくて、ちょっと嫌なパットが残った。それをきっちり入れてきてね。

宮里 あれはもうご褒美でしたね。本当にそんな感じがしました。

でも、ゴルフはとてもいいスポーツです。私はもちろん引退はしていますが、競技としては続けられるので、すごく今、ゴルフが楽しいです。80打っても気にならない時が来るからと言われたんですけど、今、まさにそれなんですよ(笑)。痛くも痒くもないんです。

戸張 だから楽しいのよ。

宮里 楽しいんですよ。やはり現役時代は1、2ヤードを争う世界だったので、クラブを変えることもすごく慎重でした。でも今は1ヤードでも飛ぶんだったらボールもドライバーも変えます。現役の時よりもはるかにいろいろなクラブを試しています。

戸張 心の中はちょっとアマチュアっぽくなるんですよね。

宮里 本当にそうですね。全然違う視点で今、ゴルフをしていますが、やはりいい競技だなと思いますね。

早川 とにかくゴルフは老若男女がそれぞれのレベルで生涯にわたって楽しめるスポーツですからね。

(2023年3月3日、三田キャンパスにて収録)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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