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【三人閑談】
ゴルフは生涯スポーツ

2023/05/25

反対を押し切って木を切る

早川 僕が戸張さんに一番感心しているのは、木を切れと、かなり強く要求することなんですよ。

宮里 はい、存じています(笑)。

早川 僕は川奈ホテルゴルフコースが好きだから毎年、お正月に行っているんですが、海沿いに大きな松がいっぱいあって景色をちょっと阻害していたんですね。それを戸張さんが切らせたら、川奈らしく原点に戻ったような感じがする。キャディーさんに聞いたら、「ものすごく反対がありました」と。

戸張 僕がどんどん海沿いの木を切ったら、川奈は世界ベスト100コースランキングが70位程だったのが、50位まで上がったんです。あるパネリストのコメントに、海沿いが非常にきれいになって海と一体化したのがポイントを上げた理由だと書いてあった。

ペブルビーチの海沿いに最終18番があるけれど、あの左側に木が植わっていたらやはり変でしょう?

早川 そうですね。右側に1本あるだけでいいですよね。左から攻めないとバーディー取れないから。

ちょうど川奈とペブルビーチは同じ頃の開場ですよね。伐採ですごく良くなりましたよ。12番とか15番とか海がきれいに映る。

こんな話も聞きましたよ。龍ヶ崎で日本オープンをやろうとなった時に、戸張さんが木が邪魔していると。それであの木を切れ、この木を切れと言ったら龍ヶ崎は言うことを聞かなくて、トーナメントを返上しちゃったと。

戸張 でも何かを変えようとするときは、そのくらいきちんと言わないと変わらないんです。世の中すべて。変化を嫌う人が多いです。

早川 古いゴルファーは皆反対するんですよね。でも、我孫子ゴルフ倶楽部も木を切ってさっぱりしました。

宮里 キャディーさんは戸張さんがここ切れと言って、すごくすっきりしたと言っていました。

早川 改造した直後に行った時は違和感はありました。でも、この前行ってみたら、ちゃんと落ち着いたコースになっていて。

戸張 床屋に行った後にすぐ会うと、何か変だと思うじゃない。でも大体1週間ぐらいすると落ち着くんです。だから慣れの問題なんです。でも結構、僕は危険だと思われている(笑)。

早川 ああいうのを恐れずやるところはすごいですよ。

マッチプレーという原点

戸張 日本アマチュアという試合はずっとマッチプレーでやっていたんです。それが3年前から男子もストロークプレーに変えてしまった。僕は大反対しました。マッチプレーというのはゴルフの原点だからです。

馬場咲希選手が勝った全米女子アマだってマッチプレーです。日本アマチュアの最高峰の試合が、目の前にいる相手と戦うというゴルフの原点ではなくなるのは良くない。

早川 マッチプレーは実際、面白いですよね。自然と人間との闘いのゲーム。

宮里 面白いです。ストロークプレーとは全然違う。

早川 カレドニアンはマッチプレーを随分設けているんです。5大競技の他にウィークデーも(中部)銀次郎杯や金田メモリアルでマッチプレーをやっていてすごく参加者が多い。それだけマッチプレーをやりたいという人が多いんですね。

カレドニアンはグリーンが速くて面白いということで、割と上手なプレーヤーがたくさん来るようになりました。月例競技が、以前は参加者が30人ぐらいだったのが、今はもう150人。月例だけで満杯です。

戸張 ゴルフの歴史は基本的にスタートはマッチプレーなのです。要するに一緒に行って勝負が決着したら、帰ってもいいし、先を楽しんでもいいという。スコットランドは昔全部そうで、全英オープンが1860年に始まった時、初めてストロークプレーで行われるようになった。

でも脈々とマッチプレーの系譜は残っていてそれが原点です。

早川 ストロークプレーとマッチプレーではルールがだいぶ違うんですよ。オーケーの出し方なんかも。

宮里 コンシードですよね。

戸張 僕は日本プロゴルフマッチプレー選手権というのを作ったことがあるんですよ。それで、テレビ朝日で毎週、1試合ずつ放映していったんですが、すごく面白かった。

先に長いのをコーンと入れて、バーディーチャンスの人がうろたえてスリーパットするとか、結構そういうシーンがあるんだよね。

早川 マッチプレーをしている人はものすごく興奮していますよ。よっぽど面白いんでしょうね。

国際化への対応

早川 戸張さんにお願いしたいんですけど、今、テレビに映った画面に、コース名がほとんど入っていない。だから、途中から見ていると、このコースどこかなと思うことも多い。どこのコースの何番という表示を出してくれるといいなと思うんですけれど、ぜひ言ってください。

戸張 わかりました。前は何人もいたんですが、テレビでプロではなくてトーナメントの解説をする人が、今、僕しかいなくなっちゃったんです。僕は50年前、フジサンケイの1回目に、「あなたが企画した試合なんだからしゃべりなさい」と言われて、それでしゃべり出したのが最初なんです。

早川 戸張さんの声はすごく通るんですよ。だから解説者としてはすごく印象に残りますね。

宮里 素敵ですよね。50年やられてきて、これからゴルフがどういうふうになってほしいと思いますか。

戸張 どのみち、より国際的になると思うんですね。世界中、どの国のどの試合に出ても通用するプロゴルファーであることが要求される時代が来ると思うんです。

テレビの中継も、今は、日本語でしゃべって日本語でスコアが出るから日本のトーナメントって日本でしか放映できない。昔、英語でスコアや名前を出せばと言ったことがあるんだけど、いまだ改善されない。

それから、今、ゴルフをプレーすると、ゴルフ利用税という税金を払っているわけです。やはりあれが別の形にならないとスポーツにならないでしょう。税金を払うスポーツってあまりないわけだから。

宮里 確かにそうですね。

戸張 そのあたりが変わってほしい。よりインターナショナルになることは間違いないので、それに見合う準備を、ゴルフ場もトーナメントもアマチュアの世界もやっておかないといけません。

ダブルペリアというハンディキャップ方式でコンペをやるアマチュアが日本では多いんですが、あれは全く日本でしか通用しない。外国、特にアメリカは、ゴルフ場の会員でもそうでなくてもハンディキャップを取れるようなシステムになっている。それによって、アマチュアのゴルフが楽しく運用できるようになっているんです。

早川 ハワイでゴルフをした時に、一緒に回ったアメリカ人は皆ハンディキャップのカードを見せるんですよ。日本にはないので、私は適当にハンデを言って回りましたけどね。

宮里 戸張さんがおっしゃるように、これからどんどんスポーツとして競技がより国際的になるのでしょうね。今でも、すでに私の感覚ではゴルフは全く違う競技になっています。この5年ですごい変わったと思うんです。オリンピック競技になったのも、私の中ではすごく大きな変化でした。

今までは、オリンピアンの方と話をする際、「ゴルフってプロ競技じゃないですか」と言われることが多かったので、壁も感じていたのですが、そういうものがなくなってゴルフがもっと世界に広がるといいなと思うんですね。

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