三田評論ONLINE

【三人閑談】
ピストバイクで駆け抜ける

2023/03/24

秘密兵器? 内装変速ギア

ピスト 小川さんが普段乗っているクロスバイクも使うギアはほぼ決まっていませんか?

小川 たしかにそうかもしれません。あまり意識したことはありませんでしたが。

ピスト 僕はクロスバイクやロードバイクに乗っていたころによく使うギア比の幅に気付いたんです。傾斜に応じて重くしたり軽くしたりしているけど、よほどじゃないと基本はこの範囲しか使わないと気づき、固定ギアのピストバイクに乗り換えることにしました。

中島 僕は亜流なので、今乗っているピストバイクには内装変速ハブのギアが載っています。

ピスト ああ、これはまた新しい。僕も内装ギアに憧れがあります。

小川 へえ、それはどんなものですか?

ピスト ハブと呼ばれる後輪の中心部にギアが内蔵されているんですよね。

中島 そう。一見するとハブがやけに大きいと思われるのですが。

ピスト 見た目は完全にシングルギアですよね。シングルギアはシングルスピードとも呼ばれますが、ギアがついている自転車は普通、漕ぎながら6段、5段、4段、3段と切り換えていきますが、そのように変速するのはペダル部分にギアが付いているからです。後輪にギアが付く内装ハブは停車中に切り換え、ギアがセットされた状態でいきなりスタートできるのが利点です。6段で止まり、1段で漕ぎ出せるという仕組みは便利で僕も迷ったのですが、カスタムするのにも結構お金がかかりますよね。

中島 そうですね。僕ももともと普通のピストバイクに乗っていたのですが、お店でカスタムしてもらいました。ピストジャムさんのようにいいギア比を探すのが面倒くさくなってしまって、つい(笑)。

ピスト それも個性ですから(笑)。でも本当に皆、好きなように楽しむように変わってきていますね。

小川 ピストバイクは田舎道を走るよりも街乗りのほうが向いているのでしょうか?

ピスト ギアが付いていないのがピストバイクの性能なので、ロードバイクのようなヒルクライムには向いていないでしょうね。舗装された道で、勾配があってもたかが知れているような道が向いていると思います。

小川 湘南のような海沿いを走ったら気持ちよさそう。

中島 それは気持ちいいでしょうね。でも間違っても三浦半島1周しようぜ、ということにはならないと思います(笑)。

カスタムする愉しみ

ピスト 小川さんはパーツを変えてみようとは考えますか?

小川 私は全然ないですね。完成車のまま乗っています。

ピスト 例えばバーテープ(ハンドルのグリップ)の色を変えたいとかは?

小川 あ、それはやります。バーテープやボトルゲージを差し色にしようとか。でもその程度ですね。

ピスト 僕はハンドルのタイプをドロップハンドルやフラットハンドルなどいろいろと試して、最近、マスタッシュバーという昔ながらのM字型スタイルに行き着きました。

中島 マスタッシュバーは最近、自転車店の「ブルーラグ」が提案しているスタイルですよね。

ピスト そう。ピストバイクもゆったり乗りましょうよ、という提案ですね。それがとても楽なんです。同じ自転車でも日々そういう発見があるというのも楽しみの1つですね。

中島 ピストバイクは皆、ハンドルを変えますよね。スタイルごとにブームがあったりもします。

ピスト ハンドルの流行もありますね。僕も短ければ短いほどかっこいいと思っていた時期があります。

小川 使わなくなったハンドルはどうするんですか?

中島 僕は誰かにあげたりします。

ピスト 僕もそうですね。新しいハンドルの様子を少し見て必要そうなら手元にとっておいたりもします。

自転車競技の世界

ピスト 今はマウンテンバイクでもシングルスピードの競技もできているそうですね。

小川 シクロクロスにもシングルスピードの競技があります。

ピスト 競技でシングルスピードを走る人たちは相当きついですよね。ちなみに、普通のシクロクロスのギア幅はどれくらいあるのでしょう?

小川 私は12速の電動式ギアを使っていて、レース中はほぼすべての段を使います。すごくこまめに切り換えます。

ピスト 電動のギア、めちゃくちゃすごいですよね。

小川 eTapと呼ばれる電動式の変速機構で、ボタン1つでウィーンと変速されるんです。走りながら自分でコントロールします。

ピスト 一度電動ギアを知ってしまったら、もう普通の自転車は乗れなくなりそうです。

小川 シクロクロスは自転車競技の中でも一番変速が多いんです。コーナー1つで2、3回、変速します。でも私にとってはシングルスピードの競技も面白くて、見ていてもすごく楽しいですよ。

ピスト シングルスピードのレースも今流行っていますよね。ポピュラーなクランカースタイルのハンドルで、マウンテンバイクの初期型のような、ビーチクルーザーに太めのタイヤを付けたタイプの自転車を街でよく見かけます。こんなので競技するって……とも思いますが、そういうシンプルなものが残るところにも面白さがありますね。

海外ではピストバイクのレースも行われていて、メッセンジャーたちが参加しています。活躍している日本人もいるので、国内でもそういうイベントが盛り上がったらいいなと思います。

中島 小川さんはどうしてロードレースからシクロクロスに転向したのですか?

小川 理由の1つは、ロードレースはアスファルトの上を走るので大ケガをする心配があるからです。それに比べ、土や砂の上を走るシクロクロスはスピードが出ないので安全なのです。自転車はあくまで趣味として、今は月曜日から会社に行くことが一番大事ですから(笑)。

中島 社会人になってケガをした経験はありますか?

小川 ケガはないです。私はもともと信号がある道が好きじゃないので、基本的には安全なところしか走りません。平日は自室のローラーに乗るくらい。

中島 でも、ちゃんとトレーニングしているんですね。

小川 さすがにそれをやらないと大会では走れないです。

ピスト やっぱり都内を走る場合は信号が多いのでストップアンドゴーの繰り返しになりますよね。都内でもロードバイクに乗っている人たちをよく見かけますが、東京は自転車の性能を生かしきれないなあと思うんです。加速しても数十メートル先でまた止まらないといけなくなる。

小川 都内を走るなら電動自転車が一番です。ダイチャリのようなシェアサイクルも便利。

中島 朝に時々車に乗っていると、ロードバイクで通勤している人を見かけますが、サッと抜かれた後に次の信号でまた追いつくみたいなことがあります。

ピスト そうそう。三軒茶屋をポルシェで走る感じ。それ性能生かせてないだろうと突っ込みたくなる(笑)。

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