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【三人閑談】
文楽を愉しむ

2019/07/25

師匠の左遣い

 師匠が玉女さんの時代に、先代の玉男師匠が玉女さんの左を遣ってくださったことがあるんですってね。

玉男 若手勉強会のときに師匠が「左に行ってやる」と言って、「一谷嫰軍記(いちのたにふたばぐんき)」の熊谷の左を遣ってくれました。あとは「寺子屋」の松王丸の左ですね。これは、重たかったですよ(笑)。

石川 緊張してしまいましたか。

玉男 普通は緩めるところを師匠はグッと引っ張るんですよ。僕が前へ行こうと思ったら、左にグッと止められる。「間が早い」というわけです。とても勉強になりました。

 どうして人形1つを3人であんなに滑らかに動かすことができるのだろうと、すごく不思議なんです。

玉男 三人遣いというのはやはり上手いことできていますよね。でも、主役や脇役クラスの主遣いができるようになるには、やはり3、40年かかるわけです。

 そこが深くて面白いところですよね。一朝一夕にはできないわけですものね。

石川 これから舞台はもちろん、今度は後進の指導もされる。あとは普及ですね。

玉男 そうですね。今、学生向けの「文楽鑑賞教室」を東京でも大阪でもやっています。

石川 慶應の中等部が公演によく行っていました。

 鑑賞だけではなく、義太夫をちょっと語らせるとかもいいですよね。

石川 上手く魅力を伝えていくことが必要だろうと思いますね。

玉男 今後ともぜひ、文楽をよろしくお願いいたします。

 こちらこそ。今日お話を伺って、また楽しみが増えたようです。

(平成31年4月30日、京都ケンプトン清水にて収録)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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