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【三人閑談】
東京タワーを見上げて

2019/04/25

地方での人気

望月 私、まだ上の展望台(トップデッキ、250メートル)へ行ったことがないんですよ。なんとなく怖くて。耳が悪いものですから、ああいう高いところへエレベーターで速く行くのは良くないらしくて。

前田 うちのはゆっくり行きますから大丈夫です(笑)。

望月 そうでしたね。できた当時のことですが、三田の商店会の旅行でいろいろなところに行くと、仲居さんが、「東京はどちらですか」「港区の三田だよ」と言っても分からない。慶應義塾大学があると言っても、知らない(笑)。それが、「東京タワーの麓です」と言うと、皆、「すごい、いいところに住んでいるんですね」と話が盛り上がるんです。

どこに行っても話題になるものができるということは、すごいことだなと。地方の人も皆、東京タワーは知っているわけですから。

近藤 東京タワーができたことによって、三田通りは何か変わりましたか?

望月 話題は多くなりました。うちは制服をやっているので、幼稚舎のお子さんなんかがみえると、帰りは必ずと言っていいぐらい東京タワーに寄る。ただ、そこに行くのに便がちょっと悪いわけです。歩いていくか、タクシーで行くしかない。だいたいお客様はタクシーで行っちゃいますけどね。

ただ、三田通りは昔から人も車も渋滞がひどく、都電が通っていた頃には、商店会で会合をしても、夜は通りが暗いし騒音がすごい。私なども散歩するのに三田通りは通らず、一本裏の通りを通っていました。

それに国道だから商店会の旗を立ててはいけないとか、規制が多かった。照明にもいろいろな規制があって、思うようにいかなかったですね。

前田 タワーって不思議なもので、普通の建造物ですと、訪れるのは近い方が多くて、遠くから来られる方は減るものですが、タワーの場合、遠くの方が多くて近くの方が意外と訪れていない。

パリのエッフェル塔も9割が国外のお客様ですからね。国内の方はあまり訪れない、不思議な存在です。今の時代は地球の裏側の人が平気で行き来しますから、なおさらです。

望月 私はいとこ会というのをやっていて、毎年、10人ぐらいで全国ほうぼうから集まっているんです。昨年が東京の幹事で、皆にどういうところに行きたいかと聞いたら、全員が「東京タワーに行きたい」と言うんです。

前田 嬉しいですね。

望月 やはり地方ではそういった人気があるんですね。東京の人は毎日見ていると、「いつでも行けるや」という気がありますが、たまに東京に行くならタワーに行きたいという声が多い。皇居とかではないんですね。

怖かった研修

近藤 われわれ、新入社員の研修で、テレビ電波がどこから出ているかを学ぶために、タワーの展望台の上にある、普通の方が行けない電波の発信機が付いているところに行かされるのです。そこは下が簀(す)の子のようになっていて、本当に一歩も動けないような恐ろしいところでした。

上の展望台から昇って外のむき出しの部分に、保守のために梯子みたいなものが付いていまして、そこを昇っていくわけです。

前田 梯子を昇って行かれました?上部の展望台より上は260メートルぐらいまでは階段で行けるんです。そこから上は梯子です。

近藤 じゃあ階段だったかな。あまりにも恐ろしくて。ちょっと高所恐怖症気味なところがありますので(笑)。

前田 テレビ局の方は皆、そうおっしゃいます。

近藤 エンジニアの方から、「ここからうちの電波が出ているんだよ」と、誇らしげに説明していただきましたが、もう怖くて怖くて。風を感じながら東京の景色を見られるというのはあまり経験できないことでした。

前田 テレビ局の方に印象悪いんですよ。フジテレビの日枝相談役が「俺、1期入社だけど、新入社員のときに東京タワーに昇って怖かったなあ」と、いまだに言われているそうです。

260メートルまで階段を昇り切ると、タラップといわれる梯子でさらに上まで行けるんです。私も行きましたが、280〜290メートル地点まで行くことができます。そこから上はさらに細くなっていてアンテナメーカーの方しか行けません。もうタラップのところから命綱を付けます。

近藤 タワーの中に送信所という電波を発する最後のところがありまして、そこはわざとセキュリティのために分かりにくいことになっていた。これはNHKも含めて各局がそうですよね。

前田 ビル内の送信所ですね。これはビルの5階にありました。

近藤 そこも見学させていただいた。まさに当時は日本電波塔でしたから。

前田 それが主目的でしたからね。

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