【三人閑談】
ポーランドと日本
2019/03/25
国交100年を超えて
山中 冷戦が終わり、ポーランドが民主化して、その後の進路を考えたとき、やはり価値を共有する欧州への回帰というか、ヨーロッパに自分たちの将来を託すことに決めたわけです。
そしてついに2004年にEU加盟を実現させます。おそらく加盟28カ国の中で、最大の受益国はポーランドだと思うんです。
関口 そうですね。
山中 経済面では、EUの一員になったことで明らかにポーランドの現在の繁栄につながった。安全保障面でも、NATOとアメリカとの関係を大事にするという方針で今日まで平和と安定を維持してきました。
そこで問題なのが、最近EU自体が非常に求心力をなくしていて、混迷を深めていることです。移民問題やポピュリズムの動きもある。端的な例がブレグジットですね。
EUに求心力がなくなってきている状況下でポーランドがEUからの利益を受けながら、どのくらい理想とするEUの方向に働いていけるのか。日本にとっては、やはり欧州が繁栄して強くなってもらうことが重要ですし、その中で、ポーランドが建設的な役割を果たしてくれることを祈っています。
柴田 ポーランドは、自由や民主主義、そして民族の問題について、日本も様々に学ぶことができる存在かと思います。山中さんがおっしゃったように、EUの中で、正義や民主主義、自由、人権などの普遍的な価値を守る方向に戻ってきてほしい。
現在、政治的に分裂、混乱した状態が続いていますので、それを克服できればいいなと、ポーランド研究者の1人として願っています。
山中 今年は国交100周年なので、いろいろな記念イベントが考えられています。コンサートをはじめ、シンポジウム、ワークショップ、それに「ショパン展」も企画されています。
柴田 兵庫県立美術館などで開催されるようですね。芸術面だとポーランド映画祭は2012年から、イエジー・スコリモフスキ監督を監修者として行われています。1980年代からポーランド映画は岩波ホールなどで上映されてきましたね。
関口 僕の目から見ると、文化で一番長く、コンスタントに芸術家同士が親しく個人的に付き合っている交流が続いているのは、グラフィックアート、特にポスター。それから演劇ではないかなと思います。
山中 安倍総理は2013年に日本の総理としては10年ぶりにポーランドを訪問しました。2015年には、当時のコモロフスキ大統領が日本を訪問しました。
この首脳の相互訪問で日本とポーランドが「戦略的パートナーシップ」を結ぶことになりました。中身はいろいろありますが、草の根レベルでは、特に地方レベルの交流を進めようということになりました。事実、新しい姉妹都市のような関係が生まれつつあります。それから、ワーキングホリデーの制度も2015年から始まっていて、若い人が訪問先で仕事をしながら交流できるようになってきました。
百年を迎えた両国関係ですが、今後さらに交流が進んでいくことを期待しています。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。
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