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【三人閑談】
ホモ・サピエンスの誕生

2019/01/25

人類の起源はアフリカから

川端 昔はサピエンスの進化は多地域進化説というものがありましたが、今はアフリカ単一起源説が確立されていますね。

河野 基本的にはそうです。

荻原 それこそDNAで分かってきたんですね。

川端 ホモ・エレクトスもアフリカ起源になっています。

河野 アフリカでないところで生じたかもしれないのは、ネアンデルタールぐらいですか。

川端 それにしても、ネアンデルタールの祖先種はハイデルベルゲンシスで、さらにその前はと辿っていくと、結局アフリカから出てきたというイメージですね。

荻原 そうです、結局アフリカ由来ということになると思います。

川端 アフリカ単一起源説は、サピエンスの起源について言っているわけですけど、ほかの原人にしろ何にせよ、ヒトの近縁のものたちはもとを辿ればアフリカ出身だというのは印象的です。

でも類人猿までさかのぼっても、やはりアフリカ起源なんですか?

荻原 類人猿も元を辿ればすべてアフリカ起源であると考えられているんですよ。

川端 そうなんですか。荻原さんは京大がケニヤで見つけた1000万年前の化石類人猿ナカリピテクスを研究されているんですね。

荻原 残念ながら携わっているわけではありません。出たのが顎ですから(笑)。

京大がナチョラピテクスという1500万年前の化石類人猿を発見していて、これについてはほぼ体全部の骨を発見しています。ですが、いわゆる人間と類人猿との分岐に近い年代あたりの化石は歯、顎がほとんどです。さすがに顎から移動様式を推定するのは難しいですね。

河野 歯については類人猿だったら3000万年前ぐらいから、人類の少し手前くらいまで、飛び飛びだけどいろいろなものが出ています。ただし、どれが人類の祖先筋かははっきりしていません。

初期の類人猿はシンプルな歯ですが、途中からエナメル質が少し厚くなって類人猿らしくなる、というぐらいしか違いがないのです。

川端 類人猿だなと思うポイントはどこですか。

河野 それはもう歯の形です。歯を見たら類人猿だと分かります。

荻原 初期の類人猿は歯だけが類人猿的で、体は基本的にはサル的と。

河野 2500万年前のプロコンスル(絶滅した化石霊長類)ぐらいまでいくと、結構体の骨も出てきますね。「デンタルエイプ」と言っていますが、そこまで辿ると歯は類人猿だけれど、体を見ても分からない。

荻原 基本的に樹上を四足歩行するサルですね。

河野 歯の形が進化していったり、エナメル質の厚さが変わっていく原因は食べ物であろうと想定しています。ただ最近は、エナメル質の厚さは思ったよりも進化的に変わりやすく、それを基に人類かどうかを判断するのは無理なのでは、という論調になってきています。

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