三田評論ONLINE

【三人閑談】
サウナで "快汗"!

2018/08/31

「サウナ好き」なDNA

織茂 サウナって意外と微妙でして、昔風で言うと、サウナ室の周りが木かタイルかで全然肌に対する「味」が違うんですよ。要するに同じストーブでも反射熱が出てしまいます。ロウリュでも、どんな蒸気が出るのかはやはり石によります。

大泉 ストーブも電気式のものと薪式のもので結構違いがありますね。フィンランドの家庭も、どちらかというと、今は電気のほうが多くはなっている。

織茂 薪は大変でしょう。温まるまでに時間がかかるんですよ。うちの店は当然ガスです。テントサウナなどでやるときにガスだと意外と簡単にいけるのですが、薪は何時間仕事です。

原山 先ほど、軍のお話がありましたけれど、疲れているときや、つらいときにサウナがあると、やはり人を救うのだと思うんですよ。

「サウナ」というのはフィンランド語で、日本語だと蒸気浴とか熱気浴とか言ったりしますが、私は日本人のDNAの中には、「サウナ好き」というDNAが確実に組み込まれていると思うんです。

そもそも江戸時代になるまでの銭湯というのは蒸気に身を任す施設だったのですね。今の湯船につかる風呂の習慣というのは、江戸時代になってだんだん変わっていったものです。だからもともと、日本人は蒸気浴が好きだったのではないか。

織茂 好きというか、その発想しかなかった。

原山 そうです。もちろん温泉もありましたけれど、日々の生活に直結している入浴方法は、僕は蒸気浴だったのではないかと思っています。蒸気というのは、お湯を大量に沸かすよりは簡便ですから。

織茂 頼朝のお父さんの義朝も、美濃辺りの蒸気浴のお風呂で、刀を置いて中に入ったときに殺されてしまったんですよね。

原山 サウナというのはフィンランド由来ですが、汗蒸幕(ハンジュンマク)は韓国の蒸気浴ですし、ロシアではバーニャと言います。蒸気の中に身を置くというのは、世界中にいろいろな方法があります。

織茂 そうですね。温泉以外で温めたお湯に入る文化は、外国ではあまり聞きません。やはりコストと手数の問題でしょうね。

スモークサウナ

原山 暑い国でサウナに入るというのは結構珍しいでしょうね。日本でも沖縄よりも北海道のほうがサウナは盛んでしょう。

織茂 確かにそうなんですが、日本のサウナの売り上げは、もちろん、12月から3月が一番上がるのですが、7、8月も悪くないんですよ。

大泉 へえ、そうなんですか。

原山 水風呂に入りに行くんですかね。

織茂 結局、だらけてかったるくなっている体に刺激がほしいのではないですか。日本の夏というのがまた、特別不愉快ということなのかもしれませんけどね。

原山 大泉さんはフィンランドにはいつごろの季節に行かれるのですか。

大泉 だいたい夏場なんですよね。

原山 やはり一番いいときですよね。

大泉 そうですね。本当は冬に行きたいのですけれど。スモークサウナというものもありますね。煙を焚いて、それを1回全部出して入るサウナです。僕は体験したことがないのですが、そういうところはすごく厳かな雰囲気が演出されている。

織茂 原山さんは、長野の小海町のフィンランドヴィレッジには行っているのですか。

原山 もちろん行っていますよ。あそこはフィンランドの商工会議所が持っていたんですよね。

織茂 名古屋の米田行孝さんという、サウナ・スパ協会の専務理事がそこを丸々買い取って、今はサウナーの天国みたいな状態にしています(笑)。それこそいまスモークサウナをやっているそうですね。

原山 小海のはピットサウナといって、土を掘って作ったサウナなんです。日本でスモークサウナというものはないと思います。

普通ヒーターがあって、煙突で煙を出すけれど、スモークサウナというのは、そうではなくて家の中で焚き火をするみたいに小屋全体を温めるんですね。そのとき人間が入ると危ないので、小屋が温まった後に入る。だから、壁とか周りは煤だらけの状態です。本当に原始的なサウナですね。体も真っ黒になったりします。

私はサウナって進化すればするほど退化していて、昔のサウナほど真のサウナで素晴らしいものだという感じがするんです。つまり、スモークサウナがまずあったのだけど、危険だったり、簡便でなかったりするので、電気になり、煙突が付いたりしてどんどん進化していったわけですが、僕は昔のものであればあるほど気持ちいいと思うんですね。

カテゴリ
三田評論のコーナー

本誌を購入する

関連コンテンツ

最新記事