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【三人閑談】
サウナで "快汗"!

2018/08/31

「ロウリュ」を浴びる

大泉 フィンランドでは、普通の家の中でもサウナ室があって、外気浴ができるエリアがあり、外の空気を浴びている。タナカカツキさん風に言うと、そうやって「ととのえている」んです。その空間がすごく重要なんです。

フィンランド大使館の方々は「サウナというのはコミュニケーションをするための神聖な空間なんだ」とおっしゃっていました。そこが日本との大きな違いだと。昔はサウナで出産することもあったと聞いています。

原山 私は日本のサウナはきれいだと思いますが、漠とした印象として、やはり汗臭いとか、おじさんの楽しむ場所だったと思われていますね。

織茂 そうです。「快汗」という表現は「心地よい」という意味では正しいと思うのですが、実際には、汗をかいている瞬間はそんなに気持ちいいものではないわけです。

そこから水へ飛び込んだり、外気に触れたりして、「ととのった」状態が気持ちいいということです。昔は、水に入った瞬間の刺激が楽しいとかは言われましたけど、精神的な気持ちよさみたいなものは、あまり言われていなかったんですね。

原山 そうだと思います。

大泉 フィンランドのサウナですと、ロウリュといって、水をかけて蒸気を浴びるのが一般的な入り方です。そして、向こうのサウナというのは大体50度から70度ぐらいで、日本のサウナよりもマイルドな設定になっています。

ロウリュをすることによって体感温度を一気に上げるというのが向こうのサウナの入り方なんです。ロウリュというのはフィンランド語で蒸気のことを言うんです。

原山 日本で「いいお湯だったな」みたいなことを「いいロウリュだったね」と言う感覚ですかね。

織茂 うちのロウリュは20分おきに、自動で水をかけています。

原山 トーホーさんのサウナのことを、僕らは勝手にオートロウリュと呼んでいます(笑)。

織茂 ロウリュのイメージとしては、目に見えない蒸しタオルが体中にワッってかかる感じ。熱いサウナの中にいるのですけど、なおかつもう1回、目に見えない熱がボーンとくる。それで、あおぐと、バサッ、バサッと熱風がくる。

原山 サウナって我慢するものではないのです。そこがまず違う。

織茂 若い人は我慢するの、好きじゃないですから(笑)。

原山 先ほど織茂さんがおっしゃったように、汗を流すことがサウナの目的ではないと僕は思っているんです。体を温めることがサウナの目的で、その温めた体を冷やすのが水風呂です。そしてサウナと水風呂の後にゆったりと外気浴で外の空気や風に当たり、自分を通常の状態に戻す。

この3つのセットをサウナ浴と呼んでいるのですが、それがあって初めて、きっとサウナの楽しみ方が分かるのではないか。

テントサウナの楽しみ方

織茂 逗子海水浴場にテントサウナを建てたときには、海へ飛び込んで体を冷やそうと思っていたのだけど、やってみたら海が要らないのです。テントサウナで目一杯汗をかいて表に出ると、灼熱の逗子海岸が高原に変わってしまうんですよ。それくらい砂の上の風が心地よい。

大泉 今、「ミズジャパン」の活動としては、キャンプイベントでテントサウナを設置して楽しんでもらうといったことがメインなんです。また、キャンプ場を運営されている方に、「導入してみたらいかがですか」という話をしています。

織茂 一番小さいもので何人用ぐらいなんですか?

大泉 4人用ですね。今持っているもので一番大きいのは20人ぐらいが同時に入れるようなものです。

織茂 20人というとストーブも大きいので、日本だとそう簡単に保管ができないでしょう。

大泉 そうですね。すごく大変なのですけど。

原山 最近ですと、サウナトースターといって、車で牽引できるサウナがありますね。キャンピングカーみたいな。

大泉 テントサウナというのはもともとは軍事用として使われていたようです。フィンランドの方に「テントサウナをやっている」と話すと、「ああ、軍のやつね」みたいなリアクションがあります。

フィンランドでは、一家に一部屋サウナ室があるのです。それで「サウナがないところに行ったらどうしよう」ということで開発されたのがテントサウナです。だから、フィンランド人は普通の人はテントサウナには入らないのですよ。

織茂 そうなんですか。

大泉 どこの家にもサウナがあるし、彼らは週末や長期の休みのときはサマーコテージに泊まりに行きますが、そこにももちろんあるので。

だからわざわざテントサウナを作ることはほとんどしないようです。ただ、日本ではそうもいかないので、逗子海岸でも、雪山でも、そういったところでサウナをやるには、やはりテントサウナが、すごく便利な道具だなと思っています。

織茂 東日本大震災の際に、サウナ・スパ協会の復興支援活動で宮城県女川にテントサウナを設営しました。これは結構大変でしたが、好評でしたね。震災当時、とても寒かったこともあり、大変喜んでいただきました。

被災地なのでもう難しいことを言っていられない。裏に川があるから、テントサウナで温まっていただき、汗だけ拭けば、最低限、満足してくださるのではないかと思いまして。

原山 日本サウナ・スパ協会は社会貢献に積極的に取り組まれていますね。被災地はまず、お風呂に困るんです。お風呂は大量の水を用意するのが大変なので、サウナだったら簡易に置けるということですね。

織茂 そうですね。だけどそれにしても面倒臭いんですが、現地の方がとても一生懸命協力してくれました。避難所にいたおじいちゃんが、1人でサウナ番をしてくれて、朝から廃材を拾ってきて、何時間もかけて温めてくれました。そして、浴槽がなければ満足してくれないと思っていた漁村の皆さんが、サウナ室をものすごく喜んでくれたんです。

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