【三人閑談】
童謡は時代を超えて
2018/03/01
新しい童謡をつくる
若松 兵庫県のたつの市と福島県の広野町では、新作の童謡が今でもつくられていますよね。
大石 たつの市は三木露風の生まれ故郷で、詩のコンクールをやっていますね。
若松 僕も少し関わったことがあるのですが、本当に100年残るような名作って、なかなかできないんですよ。やはり詩が難しい。
僕は戦前の童謡が好きなのですが、明治から大正、昭和というのは、時代はいろいろな意味で貧困だったけれども、だからこそいろいろな表現が豊かに花開いた。今はそういう時代ではなくて、ある意味、もう飽和して行き詰まっている。そこでいい詩を書くというのは、至難の業ですよね。
大石 曲の良しあしももちろんあるのだろうけれども、社会の構造自体がもう、特に童謡においてヒット曲が生まれにくい状態なのではないかと僕は思います。
若松 やはりどんなジャンルでも、新しいものをつくっていかないと途絶えてしまうのではないかと思います。だからつくられていってほしいけれども、なかなか出てこない。
大石 だからこそ、伝えていかなければいけないというようなことは強く思うんですね。今、例えば老人ホームに行って、みんなが歌う歌は童謡です。やはりそういう年齢になると童謡が大切なものになってくる。
片岡 「うた」の語源は、心を「打つ」から出たという説があります。子どもが歌いたい歌というのは、子どもが自分の気持ちを乗せたくなる歌ということだと思います。その乗せたくなるものが非常に形式的だと、子どもはなかなかそれを自分自身のものと感じられない。
そういう部分で、もしポップスの中に「子どもが気持ちを乗せたくなる要素」があるとすれば、それは学ぶべきでしょうね。
若松 子どもが歌いたくなる歌が、これからもぜひ生まれていってほしいですね。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。
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