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【三人閑談】
少数言語を旅する

2018/01/01

大学で少数言語を学ぶ

佐藤 SFCではアイヌ語の授業もされていらっしゃいますね。

藤田 はい、スペイン語圏に関する研究会とともに、アイヌ語とアイヌ語の口承文学から世界観を学ぶという研究会をつくりました。

学生が来るのだろうかと心配していたら、これがSFCの面白いところで、年によってはスペイン語圏の研究会を上回るぐらいの学生数が来ています。東京でも、アイヌ語を勉強できる大学というのはあまりないし、教えられる人もそれほど多いわけではありません。アイマラ語の自由学校の話とも重なりますが、これだけ関心がある人がいるのかとちょっとびっくりしています。

井上 学生さんはどんな関心で来るのですか。

藤田 アイヌ語やアイヌ語の口承文学そのものに関心を持つ人もいれば、もう少し民俗学的な関心、例えば出身地方の方言でお年寄りの人たちの伝承を記録してそれについて考えたいなど、さまざまな関心を持った学生が集まってきます。

ちなみに、これは大学書林ではないのですが、白水社に『ニューエクスプレス アイヌ語』という中川裕さんが書かれた教科書があって、それを教科書に指定したところ、先日白水社の人から「SFCで急にまとまった数売れたので何が起こったのかとびっくりしたら、そういうことでしたか」という連絡をいただきました。

佐藤 その気持ち、よく分かります(笑)。

そういった言語が学べるというのは大変素晴らしい環境ですね。

藤田 SFCでは他にも、同僚のスペイン語の教員は、実はバスク語のネイティブスピーカーです。また、英語の先生で、フィンランド語のネイティブの方もいらっしゃいます。そういった人たちで、一緒に何か授業ができないかと考えているところです。

井上 今、小さな大学はどんどん外国語科目の数を減らしていて、英語と中国語しかない、みたいな大学もいっぱいありますからね。慶應には西脇順三郎、井筒俊彦以来の言語研究の伝統があるわけですから、そういった世界の多様な言語についてこれからも積極的に取り組んでいきたいですね。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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