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【三人閑談】
ウルトラセブン50年

2017/10/01

  • ひし美 ゆり子(ひしみ ゆりこ)

    女優。1965年東宝入社。映画出演等を経て1967年よりTBS「ウルトラセブン」のアンヌ隊員役を演じ、人気を博す。著書に『アンヌ今昔物語: ウルトラセブンよ永遠に……』等。

  • 碓井 広義(うすい ひろよし)

    上智大学文学部新聞学科教授。1978年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。1981年テレビマンユニオンに参加し、実相寺昭雄監督に師事。慶應義塾大学環境情報学部助教授等を経て現職。専門はメディア文化論。

  • 桑畑 幸博(くわはた ゆきひろ)

    慶應丸の内シティキャンパス シニアコンサルタント。1985年九州大学経済学部卒業。大手ITベンダーにて企業の情報ネットワークシステムの営業やITコンサルティングに携わった後、現職。

「セブン」とともに生きている

桑畑 ちょうどこの10月1日が「ウルトラセブン」テレビ放映開始から50周年となります。そんな記念すべきときにアンヌ隊員を演じたひし美さんと、実相寺昭雄(じっそうじあきお)監督の愛弟子であった碓井さんにお越しいただき、お話しできるのは光栄です。まずこの50周年に対する思いをひし美さんからお伺いしたいのですが。

ひし美 もうあっという間の半世紀という感じですね。ちょうど私、20歳だったから、気が付いたら古希を迎えていた。生まれてから20歳までと、20歳からの50年間が同じ長さのように感じます。大人になると早いですね(笑)。

桑畑 それは同感です(笑)。碓井さんは、どのような感慨を50年に感じておられますか。

碓井 そうですね、「セブン」ファンにとってもあっという間という感じがして。半世紀前の話を懐かしむという感覚ではまったくないです。

ひし美 同時に進行している感じ。

碓井 はい。セブンとともに生きているような気がします。

ひし美 そうそう。何回見ても違う角度で見られる。新しい発見がいまだにあるんですよね。

碓井 僕らのようにリアルタイムで見ていた人間が今見返しても、何かしらの再発見があるし、今の若い人たちが見ても、彼らなりの発見があるわけです。そういう発見や再発見ができる特撮テレビ映画ってなかなかあるものじゃない。

ひし美 そう言ってくださると有り難いですね。

碓井 このウルトラセブンという作品の骨格が、当時の空想特撮シリーズの中でも、すごくしっかりしていたんじゃないかと思うんです。だから、年月とは関係なく、時空を超えて生き続けた。

ひし美 製作経費抑制のため、脚本家も若くて安く使うことができる人にお鉢が回ってきたんですって。市川森一先生だってその後大御所になりましたけど、あの頃は若かった。まだ名もない若者が多く集まって作っていたんです。

桑畑 そこにエネルギーがあったんですね。今の若い人たちもそういうエネルギーを感じているから、「ハマる」ところはあるんでしょう。

ひし美 そうですね。今見ても、現代とそんなに差がないじゃないですか。「あ、こんなことが今世の中で起きている」ということが、この作品の中にいっぱいありますよね。その当時は、25年後を想定していたんですが、その倍時間が経ってもまだ分かる。

碓井 ある種、普遍的なテーマというものがちゃんと込められていた。

日曜の夜7時放映という、基本的には子供向けの枠にもかかわらず、重たいテーマも物語の中にしっかり取り込んであったんですね。

桑畑 普遍であり、かつ最新のトレンドであるとも言えます。いわゆる安全保障の視点から見ても、北朝鮮のミサイル問題とか、核開発という話と、ギエロン星獣の「超兵器R1号」(26話)のお話はリンクする。

碓井 そうですね。「第四惑星の悪夢」(43話)だって、AIやロボットがどこまで進化するのかという話で、完全に時代の先取りです。

桑畑 そうです。『ターミネーター』(第1作は1984年)の何十年も前ですからね。

ひし美 私も最近よく分かったんです。当時は何をやっているんだかちっとも分からなくて。

碓井 でも僕たちも当時は子供でしたから、見ている最中は、ただ面白がったり不思議がったりしていただけで、後からだんだんその意味が分かってきたんですよね。

ひし美 当時は怪獣の戦いだけが面白くて見ていた人もいたんでしょう。

碓井 アンヌ隊員だけを見ているとか(笑)。その頃はそれぞれの見方をしていたわけですが、実は深いものがたくさんちりばめられていた。

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