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田沼千秋:慶應の学食から総合フードサービス企業へ

2017/08/01

海外事業の発展

──これからグリーンハウスをどう発展させていくのか。そのビジョンをお聞かせ下さい。

田沼 1つの大きな節目は海外事業です。1991年、韓国のLGグループの方が日本に来られ、韓国で大量調理の給食サービスのビジネスをやりたいので提携してくれないかと言われた。ノウハウを全部あげて、現在1500億円。

その後、2001年に「これから日本食が非常に面白いので、レストラン事業をやりたい」というので「さぼてん」を紹介したら、すごく興味を持って、いま韓国は70店、店舗売り上げで50億以上の事業になっていて、海外全体で1番規模が大きくなっています。

海外レストラン事業は、現在8カ国10都市で店舗数が127店。この売り上げが120億ぐらいありますが、社員食堂などのフードサービスやホテル事業も含めると海外事業はまだまだ伸びると思います。

──FC(フランチャイズ)にしろ、やはりパートナーを大切にしながら海外で展開されているんですね。

田沼 もう間違いなくそこですね。私は海外事業は、最初に出ていくときにオーナーがまず気持ち良く会っていただけることと、ケミストリーが合うかどうかが重要だと思っています。これが間違ってはいけない。いい人と会って、本当に一緒にやっていけるいいパートナーが見つかれば一番いい。

タイや台湾にもよいパートナーがいて非常に上手くいっています。いま中国に日本企業が独自で出ていこうとして苦戦していますが、私どもは台湾の会社と一緒に中国に約10店舗出し、これも非常に業績がいい。

やはり成長することだけが目的だと上手くいかない。我々は一緒にやる社員の人たちが気持ち良く仕事をして、同じ環境で目的を一緒にしてやっていけるような環境づくりをします。

ヘルスケア事業の成長

──他にこれから伸びるのはどの分野でしょうか。

田沼 もう1つはホテル事業です。いま20年目ですが、「グランバッハ」という自社のブランドのホテルもスタートしました。また、沖縄はいま450室と200室のホテルを2つやっています。インバウンドが増えていますので、ホテルはこれから差別化次第ではまだまだ伸びます。

──レストランの海外事業とホテル事業がこれからの中心でしょうか。

田沼 それにもう1つがヘルスケア事業、食を通した健康を売る、高齢者と病院へのフード事業です。これから世界で伸びるマーケットの中に、ダイエットを含めた健康を考えるヘルスケアの世界がある。特に高齢者のヘルスケアは世界的に需要が増している。実は当社でもここが一番成長しています。

──病院や有料老人ホームなどへの食事提供も含まれますね。

田沼 そうです。病院はまだ直営の患者食が相当あるのですが、保険点数がどんどん減らされているから、直営だと大変で、食事提供は外にどんどん任せるようになっている。

もう1つは、最高級の高齢者福祉施設です。オリックス、東急不動産、三井不動産、セコムさんなどがこういった施設を作っています。健康なうちに入られて、最後は24時間ターミナルケアまでやる。そこで一番重要なのは食事です。私どもはこのシェアが高くて、いま70%ぐらいです。

これから日本で起こることは、どこの国でも起こる。特に中国は、10年後は高齢者ばかりになります。だから、このビジネスは日本を1つのモデルにして、今後海外でもすごく伸びると思います。

さらに、ヘルスケアということで言えば、「レコードダイエット」と言いますが、「あすけん」と言う当社のダイエットアプリがいま1週間に会員が1万人ずつ増えています。

──えっ、1週間で1万人?

田沼 いま7月1日現在で138万人が利用しています。「レコードダイエット」とは、自分の食べる食事をスマホで写真を撮って送るなどで記録するもので、「あすけん」では、カロリーと栄養価が自動的に計算されて、アニメの女性栄養士さんが、画面上で「こういう食べ方をしたほうがよいです」とアドバイスするのです。3カ月続けるとだいたい3キロ痩せます。「レコードダイエット」のアプリでは、たぶんうちの会社がアジアで一番大きいです。

──そうやって様々なビジネスを組み立てていらっしゃるんですね。

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