三田評論ONLINE

【三人閑談】
想い出のつるの屋

2023/10/16

つるの屋から広がる縁

北居 ある日、チーさんに、「北ちゃん、ちょっと紹介するよ、滋賀県出身の人だよ」と紹介された。滋賀県出身の人って、あまり東京で会わないのですが、私と出身高校(虎姫高校)が同じでびっくりして。それが慶應の経済ご出身の枩山(まつやま)さん。

その枩山さんが非常に積極的な方で、そこから親しくさせていただき、2018年の11月3日、つるの屋さん50周年の記念祝賀会の企画を言い出したのです。

大先輩から、いきなりやれと言われ、いろいろ準備もして、お声掛けさせていただいたり。枩山さんの会社関係の方に助けていただいたりしました。

浜田 2017年だったと思いますが、今でも続けているシニアラグビーの仲間と一緒につるの屋に飲みに行ったら、桂子さん(加藤桂子さん、ママの妹)かチーに北居さんと枩山さんを紹介されて、それで私も引きずり込んでいただいて。

北居 それも本当にご縁でしたよね。應援指導部の方が深く関わっていらっしゃるというのは聞いていたんですが、直接の接点が私にはなくて、そのとき初めてお会いしたのです。

それで、浜田さんのお話を聞いたら、厨房で料理をしていたんだみたいな話で、そんなにつるの屋との関係が濃い方がいらっしゃるんだ、「それはすげえな」と。

今度の展覧会のために、つるの屋の名物料理を再現するデモンストレーションをされたんですよね。

浜田 ええ。7月に麻布十番のフリーキッチンスペースというところをお借りしてやったんです。

まず何を作るのか。寄せ鍋と豚のこがね揚げにしましょうと決めて、食材を買って持ち込んで。豚のこがね揚げは実際に調理したのです。寄せ鍋は熱を入れると食材が沈んでしまうので盛り付けだけ。その2つの料理を合羽橋の道具街の食品サンプルを作る方にお渡ししました。それを基に、展覧会のためにサンプルを作ってもらうわけです。

北居 なるほど。お作りになったこがね揚げは召し上がりました?

浜田 はい。おいしかったです。バイトをしていたのは半世紀も前のことで私は作る自信がなかったので、「こういうふうにしましょう」と言って、2つ下の應援指導部OGの神津さんに調理してもらいました。

北居 再現可能なわけですね。

浜田 レシピは自分の頭の中に残っていましたね。

結婚式の二次会も

北居 濃いと言えば、高田さんもつるの屋との関わりが濃くて、結婚式の二次会をつるの屋でやられた。

浜田 それはすごいですね。

高田 いや、あそこでお披露目された方は多数おいでだと思います。私も他の方の会に参列したことがありますので、ただの一例です。

95年に私もゼミを持ち、その6月に籍を入れることになり、親戚向きの披露宴をさせていただいた後、引き続いてつるの屋で。もちろん北居先生にもお越しいただきました。そもそも家内と知り合ったのが、あの小上がりでした(笑)。

浜田 それはすごい。

高田 北居さんにもお世話になっている教え子の親戚だと紹介を受けまして、それが小上がりだったという。

北居 深い因縁が(笑)。

浜田 二次会をした人って他にいるんですかね。

北居 私が知っているのはあと2人。

高田 私のほうの二次会はいつものつるの屋の飲み会兼という趣旨でしたので、普段通りでした。

北居 結婚式の二次会はおめでたいですが、私は二次会で一度やらかしたことがあります。毎週のようにゼミの学生を連れていっていたんですが、ある時、学生がたまには違う店で飲みたいと、わがままを言ったのですね。それで、その週は他の店に行ったのです。

すると2時間ぐらいで追い出され、これじゃ帰れないと言うので、つるの屋さんに「二次会なんだけどいいですか」と行ったら、亡くなったママさんに「今ごろ何しに来るんだ」と大変怒られて、それからもう3カ月ぐらい出入り差し止め。

高田 出禁になったんですか。

北居 出禁食らいまして、その間、行く店がなくなり大変でした(笑)。

客に媚びない店

浜田 卒業してからも時々は行っていたのですが、枩山さんほど足繁くではない。枩山さん、もうすごいですからね。

北居 近いですからね。枩山さんはNECだったのです。NECの方は結構いらっしゃいますね。

浜田 サラリーマンで一番多いのが、やはりNECじゃないですか。様々な方が来られた理由の1つは、本当にあの店の人たちはお客さんに媚びないからでしょうね。そして逆鱗に触れると初代もママも、桂子さんもチーも、塾生だろうが、先生だろうが怒ってしまいますからね。それがやはりすごいなと。そういうお店がやはり必要ですよね。

北居 その通りですね。こっちもよそ行きの顔をしなくても、普段着のままで普段どおりに接していただける。そういう店はなかなかないのかなと思いますね。

高田 私は若輩ですので、先輩方に比べれば多くはないですけど、やはり通い始めた時はよく1人でふらっと寄りまして、身内の話も含めてママさんといろいろな話をして。

あるとき、何かつまらないことで自分の身内の愚痴を言ってしまった。そうしたら、バシーンと叩かれて本気で怒られた。これは何か染みましたね。何だか、亡くなられたママさんも妹さんもそうですけど、お客というよりは家族として接してくれて。それが巧まずにそうなっている。

北居 しかも安いのです。とにかく焼酎のボトルをボンとOBや私が入れて、それであと適当に食べて、学生は1人1000円とか2000円で大丈夫。しかも夜遅くまでやっていて他に行く必要がなく本当に有り難い。

高田 初めてお店にお邪魔した時、びっくりした顔をしておりましたら、先生が嬉しそうに「ここはね、卒業生が後輩におごる時は、ボトルを置いていけばいいんだ、水と氷代はかからないから」とおっしゃったんですよね。

後輩はボトルの酒を安く飲めるというので、いつもここに来ているんだとお話をうかがって、これはもうシステムができているんだなと思いました。ゼミの下宿生が腹っ減らしで、ご飯を食べるんだったら、皆で食べよう、しかもお酒を飲みながらなるだけ経済的負担がないようにというやさしい配慮もありました。

北居 正直、つるの屋さんがなくなって、今ゼミ生を連れていく所がなくて、本当に困っていますね。

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