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【三人閑談】
❝数え方❞をめぐって

2022/10/25

使う単位、使わない単位

飯田 アメリカにいた時、身長1メートル50センチといってもピンと来ない人が多かったですね。やはり普段からの身体感覚としてフィートが染みついていてメートルは分からないよと。普段から使いこなしている数や時間の経験値で、単位は成り立っているのではないですか。

靴を買いに行った時に「23センチの靴を下さい」と言っても「What?」という感じで、いちいちシンデレラみたいに全部を履かないといけなくて不便でした(笑)。

宮代 液体の量を表す際、日本ではシーシー(cc)という言い方で料理のレシピに書いてあると思うのですが、フランスのレシピではセンチリットル(cl)という単位がよく使われます。1センチリットルは10シーシーです。

だからフランスのレシピを見ながら料理をしていると、なんか味が薄いなと思う。どうにも妙だったのですが、センチリットルで測っているのでシーシーの感覚で料理をしていると10分の1になってしまうことに気付きました(笑)。

曽布川 ヨーロッパはセンチリットルですよね。お酒の瓶もたいていセンチリットルと書いてある。

飯田 デシリットルと算数で習いますが、あれはどこの国で使っているのですか。

曽布川 どこでも使っていません。あれは日本の算数教育のためにある単位だと言っていいと思います。実際に1デシリットルは、小さなコップに1杯。そうすると体感しやすいんです。

飯田 そのために、わざわざあるんですね。

曽布川 センチリットルと同じで、もともとの考え方としては当然あり得ます。それが算数の例にちょうどいいので使っている。

飯田 よく算数の自由研究で身の回りの単位を調べるのがあって、ヤクルト1本は70シーシー、牛乳は1リットルか1000ミリリットルと冷蔵庫の中から引っ張り出して調べるのですが、1デシリットルのものは見たことがないので、架空の単位かなと思っていたのです(笑)。

曽布川 10分の1のデシや10倍のデカなどは、まず使わない補助単位ですよね。デシメートルもあまり記憶にない。

もっとたちが悪いのは、平方センチメートルは、1平方メートルの100分の1ではありませんよね。1センチの四方で1万分の1ですから分からなくなってしまいますよね。

それこそ数字だけで暗記するのではとても覚えられなくて、感覚的に理解するしかありません。だから最終的に戻ってくるのは、量はもちろんですが、体を使って数えるという感覚、直感として捉えるしかないと私は思います。

飯田 数え方も数学のほうから見るとまた違った面白さがありますね。今日はすごく勉強になりました。

(2022年8月19日、オンラインにより収録)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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