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【三人閑談】
ボードゲームを楽しむ

2022/05/25

ボードゲームカフェとは

杉浦 ボードゲームカフェというのはいつごろからあったのですか。

長岡 恐らく日本で広めたのはJERRY JELLY CAFEさんだと思います。2011年に渋谷に1号店をオープンしたのですが、開店当初はコワーキングスペースとしてオープンし、空き時間にボードゲームで遊べるような形態だったようです。そのうちだんだんボードゲームの需要が増えていき、フランチャイズ展開などを通じて店舗数を増やしています。

杉浦 東京にボードゲームカフェは何店ぐらいあるのでしょうか。

長岡 大体100店舗くらいですね。2016年頃から増え始めたようです。

客層は大きく分けて2つで、グループでいらっしゃる方と、相席希望で1名様や2名様でいらっしゃる方達です。グループでのご利用は会社帰りか学校帰りの方がほとんどです。多くの場合、ジュースやお菓子を食べながら、皆でワイワイ楽しみながらやっている。私もおしゃべりをしながら短時間で気軽に楽しめるようなものを紹介することが多いですね。

島田 学校の放課後の部室みたいですね。

長岡 はい。少人数でご来店される相席希望のお客様同士をマッチングすることも多いのですが、お互いの好きそうなゲームを見極めて紹介したり、テーブル全体が盛り上がるようにルールの説明を楽しい雰囲気で行うように心がけています。

今はやはりコロナでお客さまが7割ぐらい減っていて、少人数の相席希望のお客様が多いです。帰りがけに同じ職場の人を誘いづらいのでしょうね。ボードゲームが好きでたまらないお客様が集まっています。

島田 そういう人は家でやるビデオゲームとは違って、ボードゲームのようなものでないとだめだということなんですかね?

長岡 うちのお客さまは「ポケモン」が大好きな人が非常に多いです(笑)。「店長ごめん、ポケモンで忙しいのでしばらく行けない」と言われたこともありますので、どっちも好きなのではないでしょうか。僕にまで「ポケモン」を勧めてくるので困っています(笑)。

当店でボードゲームで遊んだ思い出がすごく楽しくてリピーターになる方も多いです。常連様同士で待ち合わせをしたり、私に連絡先を渡して、「相席希望の人が来たら連絡して。すぐ行くから」というお客様もいます。

杉浦 大人のサロンみたいな雰囲気ですね。そうなると、マナーがいい人に来てもらいたいですね。

長岡 田町は土地柄がよくて、マナーの良いお客様に恵まれています。

島田 杉浦先生のゼミでは、終わった後、自発的にボードゲームをやるような場というのもあるのですか。

杉浦 最近はちょっとできていませんが、5、6年ぐらい前だとサブゼミと称して、空き教室を予約して、私の研究室からいろいろ見繕って持っていったゲームをやって、それをレポートするようなことはよくやっていました。

ゼミでもやりますね。例えば、「もっとホイップを!」というケーキを切り分けるゲームは非常に盛り上がるのですが、個々の利得と公平性の話もあわせてします。新ゼミ員を募集する際のオープンゼミでもボードゲームに参加してもらってゼミの雰囲気を体験してもらっています。

多様なボードゲーム

杉浦 子ども向けのゲームに「ねことねずみの大レース(Viva Topo!)」というゲームがありますが、これは大人がやっても得るところが多いです。

サイコロの目によってネズミ4匹になるべく大きいチーズを取らせるように各ネズミを操るのですが、ネコに捕まらないよう、どのネズミを進めて、どのネズミをあきらめるかを判断しなくてはなりません。そういうことは私たちの人生でもありますし、資源、時間や機会は有限で、選択の失敗から学べることがこのゲームにはあるのです。

長岡 ゲームの進め方やルールから学ぶことが多そうですね。

杉浦 今は「インカの黄金」で知られる「ダイヤモンド」という地底探検をモチーフにしたゲームでは、財宝をいかに多く得るかを競います。地底の奥に進めば進むほど分け前を多く得られるのですが、その分、今まで得た財宝を没収されるリスクも高くなる。

「進むか戻るか」という、ただそれだけの意思決定ゲームですが、他の人がどう判断するかという予測や実際にどう決定したかにも影響を受けるのですね。単純なゲームですが、卒論の題材にしたり、応用バージョンを自作して研究に使った学生もいました。

あとはドイツのごみ分別のゲームもよくやります。ドイツは交通安全とか環境とか健康とか、いろいろなことをゲームにしています。

長岡 ドイツは本当に多様なゲームがありますよね。日本では、アカデミックな内容のゲームはヒットしにくいようです。

杉浦 私は去年の9月まで塾派遣留学で1年弱、ドイツに行っていたんです。ちょうどロックダウン中に生活することになり、スーパーやドラッグストアなど生活必需品を売っている店だけが開いているのですが、ドラッグストアにもボードゲームを売っているんですよ。

島田 必需品扱いなんですね。

杉浦 そのように、日常生活の中に普通にボードゲームが浸透している。カフェやレストランでカードゲームをやっている人たちが普通にいたりします。だから、あえてゲームカフェをつくらなくてもよいのかもしれませんね。

長岡 もともとヨーロッパはそういう文化があるみたいですからね。

島田 バックギャモンという双六みたいなゲームがありますが、あれを路上で、コーヒーを飲みながらやっているのを見たことがあります。

長岡 昔の日本で、路上で将棋をやっているような感じですね。

ボードゲームのブーム

杉浦 小学館の「小学8年生」という、小学生全学年を対象にした雑誌でボードゲームの取材を受けたことがあります。今、そういう雑誌の付録にカードゲームが付いていたりするんですね。

長岡 ここ数年、メディア露出は格段に増えていますね。

杉浦 ファッション系の雑誌におしゃれなものとして出たりもします。テレビでも取り上げられていますね。

長岡 テレビは番組制作の予算が削減されているため、安価で盛り上がるボードゲームは使いやすいそうです。提供側も宣伝やボードゲームの普及につながるため協力的です。

杉浦 メビウスさんの「ワードバスケット」というゲームは、嵐がテレビで紹介したら、たちまち大ヒットになりましたね。

長岡 あとは「チャオチャオ」というゲーム。当店でもすぐに売り切れました。その後メルカリで2倍の価格にまで高騰していましたね。

島田 テレビで取り上げられたら知ることができますが、普段はあまり接する場所がないですよね。最近は家電量販店などでも売られるようになりましたが。

長岡 箱だけ見ても、どれを買っていいか迷いますよね。ボードゲームをやり始めた頃、皆で温泉旅行に行くので何かゲームを買おうと思ったのですが、種類が多すぎて何を買えばいいのかわからなかったです。店の人に教えてもらって、先ほど話が出た「インカの黄金」を買ったら大盛り上がりでした。

だから店員に聞くのが早いですね。専門店の店員でしたら間違いなくわかるので。

杉浦 「すごろくや」というボードゲーム専門店がありますが、店長の丸田さんは元々デジタルゲームのクリエーターで「MOTHER2 ギーグの逆襲」などにかかわっていた方です。ボードゲームのやり方について、初心者向けの簡単なゲームこそ動画でわかりやすく説明することが大事という話をされていたのが非常に印象的でした。

長岡 田町のパイナップルゲームズという店もいいですよ。店長が自称、日本で1番説明が上手だそうです(笑)。

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