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倉田 敬子:国立国会図書館長に就任して
2024/11/15
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インタビュアー池谷 のぞみ(いけや のぞみ)
慶應義塾大学文学部図書館・情報学専攻教授、慶應義塾ミュージアム・コモンズ機構長
青天の霹靂だった館長就任
──このたびは国立国会図書館長へのご就任おめでとうございます。私たち専攻一同も大変驚きましたが、受けられた時はどんなご感想をお持ちになられましたか。
倉田 お話を初めていただいたのが3月中旬。国会の事務局の方からの突然の連絡で「館長をという話が出ております」と言われ、一瞬、何を言われたのだろうというぐらい、全くの青天の霹靂でした(笑)。
国立国会図書館長というのは、図書館情報学をやっていれば、もう何か違う世界というか、長尾真先生や羽入佐和子先生など、外から館長になられた方も皆、国立大学の学長経験者の方です。だから、私に話が来ることは全く想像していませんでした。
それに、定年退職したら自分の研究をやっとやれると思っていましたし。
──文学部長をされていましたから。
倉田 そうですね。自分に務まるのかと悩みました。女性館長は既に羽入先生がなっていらっしゃいましたが、図書館情報学研究者の館長はこれまでいませんでしたので、めったにある機会ではなく、私が断ってしまったら後進の道をふさぐことになるとも思い、意を決して翌日には承諾しました。
──研究者から国立国会図書館(以下NDL)の館長になられるところで、こういうことは考えようとか、何か思いはございましたか。
倉田 研究者と館長では役割がまったく違うということは入る前からわかっていました。ですので、そう簡単に私が今まで研究してきたことがそのまま生かせることはないだろうとは自戒も含め思っていました。
では何ができるのか。少なくとも図書館情報学を研究してきた身として、NDLに何が貢献できるのかはすごく大きな課題だなと思いますし、それを期待する声がないわけではないので、どう応えられるかは厳しいけれど、やっていかねばなりません。
国会図書館としての役割
──実際に入ってみて、やはり想像と違う部分はありますか。
倉田 はい。外からNDLを見ていた時は、国立図書館として見ていたので、学術研究だけに特化できないことはわかっていました。しかし、入って実感したのは「国会図書館」だということです。ここは国会所管の立法府の図書館であり、国会議員への立法補佐活動が第1の役割であることが、初めて感覚的にわかりました。行政府ではなく立法府であるので、予算も定員も含め衆議院、参議院の議院運営委員会にご相談しながら、進めていかないといけないという大きな枠組みがあります。
──でも、ウェブサイトを拝見すると、いろいろな催しもやっていらっしゃいますね。
倉田 そうですね。昨日、一昨日と、こども霞が関見学デーということで、小中学生の参加者が館長とお話しするという時間がありました。特に上野にある国立国会図書館国際子ども図書館は非常にたくさんのイベントをやっています。
東京本館のほうは満18歳以上の方しか利用できません。展示会や講演会などはやっていますけれど、イベントとしていつもやっている感じではないです。2年に1回大きな展示会をやっていて、今年も秋に絵巻物をテーマに開催します。
──展示はデジタルでもかなり見られるのですよね。
倉田 そうです。デジタル展示(電子展示会)にはかなり力を入れています。NDLの現在の1つの大きな柱がデジタル化なのです。例えば「近代日本人の肖像」という日本近代をつくった人たち1000人以上の肖像写真を集めたり、「NDLイメージバンク」という形で、著作権が切れている浮世絵などの画像を集めたりして公開しています。これらは研究者ではない、一般の方にも利用していただけるのではないかと思います。
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倉田 敬子(くらた けいこ)
国立国会図書館長、慶應義塾大学名誉教授
塾員(1981政、84文修、87文博)。2001年より慶應義塾大学文学部図書館・情報学専攻教授。2021~ 23年、文学部長。24年4月国立国会図書館長就任。