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和田 丈嗣:大ヒット『SPY×FAMILY』を制作

2024/02/15

  • 和田 丈嗣(わだ じょうじ)

    アニメーションプロデューサー、株式会社WIT STUDIO代表取締役社長

    塾員(2001 法)。2005 年株式会社Production I.G 入社(現社長)。12年株式会社WIT STUDIOを設立。13年アニメ『進撃の巨人』をプロデュース。

  • インタビュアー石川 俊一郎(いしかわ しゅんいちろう)

    慶應義塾名誉教諭・評議員、映画プロデューサー

コンビニまで『SPY×FAMILY』

── 12月22日に劇場版『SPY×FAMILY CODE: White』が公開されました。コンビニではいろいろな商品とコラボして大人気。前売りチケットもすごい売れ行きだそうですね。

和田 有り難いです。一番人気を実感したのは、コンビニで日用品までグッズが広がっていることです。カップ麺になったり、人々の生活の中に入り込んでいるのを見て、国民的なブームになったんだなと実感しました。

── 和田さんは1978年生まれです。80年代、90年代のアニメはどういうものを見てきたのですか。

和田 もともとは親の影響が大きくて、ディズニー映画やジブリ映画をたくさん見ていましたね。また、小学校時代、僕はピアノを習っていたのですが、行くのが嫌で「『少年ジャンプ』を買うからピアノに行こう」と、母が僕を連れていったことを覚えています(笑)。なので『少年ジャンプ』作品、ジブリ、ディズニーでしょうか。

── すごく普通ですね(笑)。高校、大学になってからはどうでしたか。

和田 ちょうど自分が大学生の時、『新世紀エヴァンゲリオン』を見ました。この『新世紀エヴァンゲリオン』と『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』『機動警察パトレイバー the Movie』などの作品を、TSUTAYAでレンタルして、しきりに見ていたのが、あらためてもう一度アニメに戻ったきっかけですね。

押井守監督作品は全部見ましたし、庵野秀明監督、宮崎駿監督のものも全部見ました。

── でも、大学卒業後は、一度は外資系IT企業に就職したわけですよね。

和田 当時ちょうどアメリカ発のITバブルで、外資系のコンサルタントやIT企業に入るということに憧れて、僕もアメリカの企業で働きたいと思い、外資系の日本法人に入りました。

アニメ業界へ入るきっかけ

── 4年間勤めて転職し、いよいよアニメ業界に入ってしまう(笑)。大きな転機となったのはなんでしょうか。

和田 東京大学大学院情報学環が中心になって行った「コンテンツ創造科学産学連携教育プログラム」という主に社会人向けの講座に参加したことがきかっけです。この講座では、多くのエンターテインメント系企業の方がゲスト講師として招かれ、直接話を聴くことができました。

その講座の中心人物の1人が、浜野保樹先生で、当時、Production I.G(以下I.G)の監査役をされていました。浜野先生のご紹介で、講師で来られた石川光久(現I.G会長)さんに出会いました。彼らとの出会いから、I.Gに入りました。

── I.Gにはプロデューサーをやってね、と言われて入ったのですか?

和田 最初は、社内Web担当からスタートしました。社内Webは、社内の主要メンバーとかかわらないとできない仕事です。この仕事をすることで、I.G社内の主要な方たちとつながりがもてたのは、今でもよかったと思います。

その後、I.Gではやれることを全力でやった結果、有り難いことに周りの推薦からアシスタントプロデューサーとなりました。

── プロデューサーの一番の仕事はお金を集め、そして人を集めることだと思いますが、和田さんはマンガを描いていたことはあるのですか?

和田 一度もないんです。ですので、逆にクリエーターへのリスペクトが非常にあって、自分にできないことをやっている人だという思いがある。ならば僕は環境を整えようと、お金と人を集め、会社をつくりました。ずっと変わらずにクリエーターが活躍できる環境をつくることが自分のやれることだと思ったからです。

自分ができないことなので、そこは明確に役割分担をして、誇りを持って僕は今の自分の仕事をやっていますね。

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