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堀江慎吾:WBCで広報兼通訳として優勝に貢献

2023/10/25

ニューヨーク学院1期生として

──高校は慶應のニューヨーク学院、しかも1期生ということですね。どうして慶應を選ばれたのでしょう。

堀江 タイミングが良かったですよね。ちょうど高校にあがるタイミングで慶應ニューヨーク学院ができました。慶應を卒業している父のすすめもあってニューヨーク学院への進学を選びました。

1期生でしたので、最初の1年は、あの大きい敷地にわれわれ120人だけでしたね。

──先生方との交流は結構密にあったのですか。寮生活だったのですよね。

堀江 先生方とは、ざっくばらんに色々な話をしていたと思います。

寮生活は、とにかく楽しかったですね。寝ても覚めても友達と一緒ですからね、楽しい思い出がいっぱいです。

──先輩がいない高校生は珍しいと思いますが、自由で、自分たちで築き上げていくような意識は皆、強かったのですか。

堀江 そうですね。部活などもまだなかったので、先生方の協力もいただきながら、自分たちでつくっていくというところはあったと思います。

でも、部活はできたけれど、まだ地域のリーグなどにも入っていないので、対戦する相手がいませんでした。1年目は、いわゆるフレンドリーマッチのような形で、近くの高校と試合を組んでもらったのを覚えています。

──勉強は英語だけの授業、日本語だけの授業もありますね。両方磨いていくのは大変だったのではないですか。

堀江 どうですかね。試験前によく徹夜で勉強したことは覚えてますけどね(笑)。自分はそれまで、日米の教育を半分ずつ程度受けていたので、語学という点では、ある程度のベースができていたのかもしれません。なので、授業についていけなくて困ったような経験をした記憶はないです。

──日本に戻られてからの大学時代はいかがでしたか。

堀江 大学時代は自由に時間を使わせていただきました。旅によく出ました。友人とバックパックで1カ月以上、インドを旅するようなこともしていましたね。何か、外に出たいという気持ちが強かったのかもしれないです。ゼミには入らせていただいて、有末賢先生の社会学のゼミでお世話になりました。

日本とアメリカのあり方を比較するような卒論を書いた記憶があるのですが、先生が根気よく付き合ってくださったのを覚えています。

チャンスにトライすることの大事さ

──慶應という学校に対してはどのようなイメージがありましたか。

堀江 何か強いイメージを持っていたわけではないですか、縦と横のつながりが強いというのはよく言われますよね。アメリカで働いている期間が長いので、それを感じる機会は、日本にいる皆さんと比べて、少ないかもしれません。でも、こちらにいても、こうやって遠田さんのような後輩と会って、仕事の上でもお互い助け合うことできていますし、いいですよね。

──これからのお仕事について、何か目標はおありでしょうか。

堀江 できれば、今後もスポーツの世界でやっていきたいと思います。通訳というところに拘わるというわけではないのですが、海外に出てチャレンジするアスリートをサポートするようなことができればと思っています。そこであれば、これまでの経験やノウハウも少しは役に立つかもしれないので。

──堀江さんはご自身で野球をやっていたわけでありません。なのに野球畑が長くなっているというのは不思議な縁でもありますよね。

堀江 そうですね。2001年にアメリカに来た当時は、日本からはイチローさんを始めとするメジャーリーガーが注目されていました。そこに、メディアという職業でのチャンスがあり、メジャーリーグの世界に入っていきました。

確かに、今は、バスケやサッカーなど、野球以外のスポーツでアメリカで活躍する選手が増えていますよね。将来、違うスポーツに携わっていくことには興味ありますが、でも、今はこうして野球というスポーツに縁をいただいて仕事をすることができているので、有り難いことです。

──若い塾員の方々にメッセージなどありましたらお願いします。

堀江 偉そうにメッセージを送れるような立場ではないのですが、あえて言うなら、色々とトライしていくことは自分にとってプラスになる、ということでしょうか。

自分も今回、侍ジャパンのスタッフとして、WBCを経験するチャンスをいただきました。仕事に入るにあたり、不安や心配が尽きなかったですが、最終的には、いただいたチャンスだから、できる限りのことをやろうと決めました。終わって振り返ってみると、失敗も当然ありましたが、本当に素晴らしい経験をさせてもらったという気持ちでいます。

みなさんも、この先、色々なところで自分にチャンスというものが巡ってくると思います。それに圧倒されてしまう、できるか不安になる、そんな気持ちになってしまうことは普通ではないかと思います。ただ、そんな時こそ、そこに飛び込んで、やらせていただく、という気持ちでトライしてみるのもよいと思います。経験は、自分の成長につながると思うので、尊いことなのではないかと思います。是非、頑張ってください。

──今日はお忙しい中、有り難うございました。

(2023年8月4日、オンラインにて収録)
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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