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笹田珠生:米金融大手の日本代表を務める

2023/08/15

女性活躍の仕組みづくり

──岸田内閣がこの間発表した、女性版骨太の方針では2030年までに女性役員比率30%を達成するとありました。このことについてはどう思われますか。

笹田 このような政府の取り組みや目標設定は素晴らしいと思います。ただ大事なのはその過程ですよね。数値目標を達成するための数合わせになりがちです。個人的には最初はそれでも良いのかと思います。候補となる女性のプールをできるだけ大きくしておくことも重要ですので。

──やはりプロセスですよね。

笹田 そうですね。色々な施策があると思いますが、弊社での取り組みをご紹介します。例えばMale Advocacyという仕組みがあります。中間管理職や部長級の男性社員が、オーナーシップをもって若輩の女性を引き上げる制度で、その男性の評価にも繋がる仕組みを取り入れています。

女性から「誰も経験したことがないので、やりたくない」とためらいの声が上がった時、「選んだ人はリスクを取って人選してくれたのだから」と、背中を押してくれる仕組みがあると、チャレンジを受け入れる女性の数も増えてくると思います。

女性管理職の数が増えてくると、「あの先輩もされているから、私も試してみたい」となりやすいのかと。ロールモデルがいるのは、若輩の女性からするとすごく有り難いと思います。

──色々なステージにモデルになる女性がいることが重要ですね。笹田さんはロールモデルになっているというご自覚はありますか。

笹田 自然とそうなっているのかもしれませんね。男性からも言っていただくようになりましたが、嬉しい反面身が引き締まる思いです。

心地良い環境から抜け出す

──私と笹田さんは同じ小林節研究会の先輩後輩という間柄ですが、私の印象では笹田さんは学生時代、体育会系で、いつも日に焼けていて、本当に元気のいい、健康できらきらしているイメージでいらした。

笹田 体育会所属ではありませんでしたが健康優良児でしたね(笑)。とにかくいつも楽しかったです。私はマレーシアからの帰国子女で慶應女子高出身です。女子高も自由な雰囲気が新鮮で、先生と生徒の仲も良く、素晴らしい環境でした。大学に入るとまた色々な人がいて、より多様性に富んでいました。卒業後も親しくおつきあいしている友人達が周りにいて本当に有り難いと感じます。

──卒業してから振り返って慶應義塾はどういう学校だと思われますか。

笹田 個人の強みを重んじる学校だと思います。まさに独立自尊。自由で、学校への帰属意識が強いと思います。ロイヤリティが高く、塾生であることを誇りに思う方も多い。そういったパワーがネットワーキングの強さや組織力に繋がります。グローバルに活躍できる可能性のある方達がたくさんいますし、卒業生にとっても共通言語で話せる心地良い環境なのです。

ただ、それだけでは駄目だとも感じます。もっと多岐にわたる活躍できる場所があるはずなのにと感じる箇所があるかもしれません。

──色々な意味で恵まれた方が多いけれど、そのことにあまり自覚的ではない人もいる。私も時々、だから、もったいないと感じるところもありますね。女性キャリアとして、何か一言、アドバイスはありますが。

笹田 Go out of your comfort zone.「心地良い環境から抜け出してチャレンジしてみようよ」とよくチームには伝えます。チャレンジ精神とリーダーシップを持ち、決めたことは最善の決断と信じて、前に進む。またコロナ禍を経験して、アジャイル(変化に機敏に対応できる)であることも大切です。

昨今、ChatGPT 等AIの急速な進化が取り沙汰されますが、次の10年はこれまでよりずっと早い変化が起きます。スピード感を持って決断することが求められる時代になっていくと思います。キャリアに関しては、やってみないとわからないこともありますが、「どうにかなる」とゆったり構え、好奇心を持ち続け、自分を信じて頑張ってください。

──ぜひ笹田さんに続く人材がたくさん出てくればと思います。今日は有り難うございました。

(2023年6月23日、慶應義塾大学三田キャンパスにて収録)
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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