三田評論ONLINE

【話題の人】
浜 佳葉子:女性初の東京都教育長に就任

2023/07/14

学校に「つながる」ことの重要性

──都庁には堅いイメージがありましたが、とても開かれているのですね。一方、今の職掌であられる教育現場ではジェンダーに関してもいろいろな課題があるかと思います。どのような取り組みをされていますか。

 昨年少し話題にもなりましたが、全国で都立高校だけになっていた男女別定員をなくす目途がようやくつきました。男女別の名簿にしないことも、進んできています。

また、ご存じのように学校の先生は女性が多いのですが、管理職は少ないんです。特に校長先生は、小、中、高と上の学校になるほど少なくなる。計画的に育成して登用していくことが必要と思っています。

──もともと教育行政に関心はお持ちだったのでしょうか?

 あまり持っていなかったですね(笑)。でも部長級の時に児童福祉の仕事をしていました。ちょうど「保育園落ちた日本死ね!」の頃で、保育行政が大変でしたが、児童虐待対応も担当していました。家庭に困難があるお子さんたちをいかに早く見つけ、手を差し伸べてあげられるかといった時、きっかけになるのは学校だと思いました。

そういう子どもたちが学校につながっていれば、異変に気付いてあげられたり、居場所ができたりすることが多く、公立学校の役割は大きいのです。

今回教育長として教育行政をやるようになり、「学校につながっていれば安心」ということは学校の先生にも、家庭の方にもお子さんたちにも思ってもらいたいなと思っています。

──「学校につながっていれば安心」というのは、本当に大事な言葉ですね。現在、公立学校はどんな様子なのでしょうか。

 私も中学までは公立ですが、あまり大きくは変わっていないと思います。中には、給食しかちゃんとしたごはんが食べられない家の子もいますし、学習に必要な援助を受けるために行政に提出する書類を書くことが難しいご家庭もある。

そのことに気付いてあげられるのは、やはり、子どもたちを日々見ている学校の担任の先生や養護の先生なのです。「ヤングケアラー」と言われるような子も、最初に見つけてあげられるのは学校ではないかと思います。

ただ、学校の先生だけでなんとかしなければと思うとパンクしてしまうし、解決できません。そこから福祉などの機関にどうつなげるか。そのような仕組みにすることが大事だと思います。それは私たち教育委員会でも考えていますし、福祉の側でも、一緒にやっていこうという話になっています。

待ったなしの教員の働き方改革

──教員の過剰な働き方が数年前から注目されるようになった一方で、教員になりたいという希望を持っている若者が少なくなっていますね。

 これはもう教育委員会で最重要課題になっています。教員採用試験の受験倍率がどんどん落ちている。今、教員の働き方改革は待ったなしで、採用試験の見直しもしています。志望者が減っている理由は1つではないと思いますが、まず時間的制約が厳しい。また、学校という場所が閉じた空間になっていて、周囲に相談しづらいとか、保護者や子どもたちの対応を1人きりで頑張らなければいけないという不安があることも考えられます。

とにかく教員がやらなければいけない仕事をなるべく減らしましょうと、外部の人材を配置する予算を確保しています。例えば副校長の事務作業を手伝う人材や授業の準備を手伝うスタッフを配置する。あるいは、子どもたちの相談にのるスクールカウンセラーを配置する。そのように教員だけではなくていろいろな人が学校に関わって、仕事を分担するようにしています。

部活動もかなり先生方の負担になっています。今、外部指導員を確保し、基本、土日の部活は先生がやらなくてもいいようにする、という取り組みも始めたところです。

──様々な形で教育の現場に入っていけるような、開かれた教育現場にしていこうという方針ですね。

 そうですね。そうしないと教員だけでは人手が足らないですし、子どもたちにとっても、いろいろな大人に触れて育つのはいいことだと思います。

カテゴリ
三田評論のコーナー

本誌を購入する

関連コンテンツ

最新記事