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辻󠄀 朋邦:元祖"カワイイ"文化の継承者として

2023/06/15

  • 辻󠄀 朋邦(つじ ともくに)

    株式会社サンリオ 代表取締役社長
    塾員(2011文)。2020 年に2代目社長として、世界の共通語「kawaii」を生んだキャラクター文化のリーディングカンパニーを承継。

  • インタビュアー小平 麻衣子(おだいら まいこ)

    慶應義塾大学文学部教授

入社から7年目に事業を承継

──サンリオという歴史ある会社を2020年に承継され、社長就任にあたってどのようなことを感じられましたか。

辻󠄀 私は慶應義塾大学を卒業後、他の企業で働いていました。小さい頃からキャラクターに囲まれて育ち、いずれはサンリオに入社することになると考えていましたが、まだ少し先のことと思っていました。ところが、2013年に父が急逝し、これをきっかけにサンリオに入りました。父には生前、「いつか(サンリオに)入るんだろう?」と言われていました。

入社当初は、海外での売上げが大きな割合を占めていた時期で、「どの国にもハローキティがいる」と評判でした。1年目は経理部からのスタートで、他の会社での経験があったので、会社のいい部分と悪い部分の両方見えました。その後、社長に就任するまでの7年間は減収減益が続いたので、何とか改革したい思いがありました。

そして2020年の社長就任のタイミングでコロナ禍となりました。大変でしたねと言われますが、この間に先代(祖父である創業社長の辻󠄀信太郎現会長)としっかりコミュニケーションをとって改革を進めることができ、事業承継もスムーズに運び、かえって良いタイミングでした。

次世代のキャラクターをつくる

──非常に歴史のある会社でファンの方も多いので、改革は大変なのだろうとも思いますが、最近では「NEXT KAWAII PROJECT」が人気を博しましたね。恒例のサンリオキャラクター大賞とはまた違った演出が現在のファン層に響いたように思います。

辻󠄀 社長に就任し、改革に着手し始めていた2020年頃、社員にもいろいろと挑戦したい気持ちがあったように思います。これまではデザインありきでキャラクターづくりを行ってきましたが、逆にこういうキャラクターをつくりたいからデザインはこうしようというふうに、新たなパターンを創出するための議論を重ねました。あるいはグローバル展開するにはどのような名前がよいかなど、しっかりと目標を持って、デザインを考えました。

NEXT KAWAII PROJECTからはネットでの投票システムというアイデアも生まれました。IP(知的財産)創造の専門部署を新設したことが大きかったと思います。キャラクターの創出方法の幅を広げる発想も、組織風土改革の一環で出てきたものでした。

──最近はキャラクターのつくり方も2.5次元や3次元へと変化しています。NEXT KAWAII PROJECTのキャラクターは、これまでのサンリオの雰囲気を残しながらちょっと斬新で、それぞれの性格がはっきりわかるデザインです。

辻󠄀 投票制度は熱量を高めるための大事な要素です。最終的に、「はなまるおばけ」というキャラクターが1位になり、デビューが決まりました。この企画で熱量を高めて笑顔になってもらうことは、サンリオの企業理念、「みんななかよく」というゴールを目指す方法の1つだと思っています。

我々は今、キャラクター会社からグローバルエンターテイメント企業になろうとしています。いつどんな時も笑顔をつくる会社でありたい。その点で「NEXT KAWAII PROJECT」も、賛否両論ありながらもいい企画でした。

──「否」もあったのですか?

辻󠄀 デビューできるのは1位のキャラクターだけなので、他のキャラクターに投票された方の気持ちも汲まないといけません。でも、残念に思う方がいることを悲観的に捉えるのではなく、あの企画を生かした次の企画を打ち出せればと考えています。

1位から10位までのキャラクターたちは期間限定でカフェを開くアイデアもあり、2位の「Kumalino(クマリーノ)」や3位の「ぷりぷりうんぴーず」等は他の企画で出てくる可能性があります。

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