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【話題の人】
末吉里花:エシカルの価値を伝える先導者として

2023/02/16

SFCでの学び

──私たちはともに湘南藤沢キャンパス(SFC)で学生時代を過ごしましたが、当時はキャンパスでもよく「SFCはパラダイムシフトを目指す」というスローガンが聞かれました。私たちが今目指していることがまさにパラダイムシフトだなと思います。SFCではどのようなことを学びましたか?

末吉 私は総合政策学部で草野厚先生の国際関係論や国際協力論の講義を受講していました。しかし、当時以上にかつて学んだことをまた自分なりに勉強したい気持ちになっています。大学での学びで最も大きかったのは、包括的に俯瞰して見る視点を持つということかもしれません。その視点の大切さを今痛感しています。

企業の方とSDGsの話をすると、「私たちは何番と何番をやっています」という。ですが、今の世界は相互に複雑に絡み合っていて、片手を差し伸べているのに片足で別のものを踏みつけていることもあります。これを「イシュー・リンケージ」と呼びますが、ある問題解決へのアプローチが、結果的に別の問題を生んでいる。電気自動車は環境に配慮したものですが、製造に必要なレアメタルやリチウムを採掘する際に児童労働のような別の問題も生まれているといったことです。

エシカルは、いろいろな問題を包括的に見る視点です。環境、経済、社会などを多角的に見ること。「木を見て森を見ない」が起きないようにすることがとても大事です。

変えていく姿を大人が見せなければ

──今の塾生にはどういう学生生活を送ってほしいですか。

末吉 海外では若い人の間で、地球環境や温暖化への意識が高まっています。日本ではそれほど大きなムーブメントにはなっていませんが、将来への不安を感じたり、社会に対して怒りをもっていたりする若い人が一定数います。一方で、まったく関心を持たない人もいて、二極化しています。

そういう若い人たちに向けて、やはり大人たちが行動で示し、率先して変えていく姿を見せなければいけないと思うのです。そうでなければ、関心を持つ若い人も増えないでしょう。

今は社会が大きく変わっていくプロセスにあり、皆でらせん階段を上っているようなものだと思います。何かチャレンジしようと思うとはね返されることもあるかもしれません。

ですが、若い人たちにはいろいろな国の人と対話して、世界は広いことをリアルに知る機会を持ってほしい。「自分たちが歴史をつくっていく」という気持ちでいろいろな経験をして社会の先導者となってほしいと願っています。

危機感を持ちつつ、ポジティブに社会課題と向き合ってもらえればと思います。

──本日は有り難うございました。これからのご活躍を楽しみにしています。

(2022年12月10日、三田キャンパスにて収録)
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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