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速水 聰:星出宇宙飛行士の健康を地上から見守る

2021/07/15

宇宙につながる人の縁

──速水君が卒業してリハビリ医になった時、宇宙に関わる仕事をすると思っていましたか?

速水 正直なところ、全然思っていませんでした。しかし面白いことに、今、JAXAに来てみると、実は宇宙との接点がいろいろあったなと思います。

1つは、私が少年の頃、父の仕事の関係で、シカゴに6年間住んでいた時のことです。家族でケネディ宇宙センターへ旅行に行って、アポロとかのワッペンをたくさん買い集めたことがありました(笑)。今でも部屋に飾ってあるほどで、その時とても感動したんですね。

もう1つ、向井千秋さんが、私が塾医学部生だった時にスペースシャトルで宇宙に打ち上がった時のことはよく覚えています。今もJAXAで時々お会いすることがあり、つながりがあったのかなと感じます。向井さんのご主人、向井万起男さんとヒューストンでお会いして、同窓の先輩・後輩として会話に花を咲かせる機会もありました。

3つ目は先ほどお話ししたように、山田先生がJAXAに関わっていらしたことがやはり大きいです。医学部アメフト部の先輩で、リハビリ科の先輩でもある山田先生が私に声を掛けてくれ、フライトサージャンを勧めてくださいました。本当に人の縁というのは大事にしなくてはいけないなと。まだまだフライトサージャンとしては駆け出しですが、リハビリ医が非常に向いている理由も少しずつ感じています。

JAXAに入職前の10年間、在宅のクリニックで訪問診療を中心に、地域のかかりつけ医をやっていました。地域医療では理学療法士やケアマネージャーなど、多職種とのチームワークが業務としてとても大事になるので、そういった経験はすごく役に立っています。

──今後の目標はいかがですか。

速水 今年の秋、13年ぶりに、JAXAは新たに宇宙飛行士を募集する予定です。飛行前の選抜の段階にもフライトサージャンは関わるので、新入りの宇宙飛行士との信頼関係を、どう作っていくかにも力を入れたいと思っています。現在、アルテミス計画がNASAで進んでいて、今度選抜される宇宙飛行士は、月面に日本人として初めて下りる可能性があるんですよ。

ただ、今は星出さんに無事に帰還してもらうことが私の目標です。その後、日本に帰国したら、リハビリの専門医としての技能を保つことも大事になります。あくまでも臨床医としての能力をきちんと維持できないと、宇宙飛行士の健康管理もできませんので。

──今後のますますの活躍に期待しています。

(2021年5月28日、オンラインにて収録)
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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