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末藤 梨紗子:「ビズリーチ」で転職に新しい風を吹かす

2021/05/25

  • 末藤 梨紗子(すえふじ りさこ)

    ビジョナル株式会社執行役員 CFO兼CAO

    塾員(2004 法)。卒業後、モルガン・スタンレー、ゼネラル・エレクトリック、グラクソ・スミスクラインを経て2019 年Visional入社。

  • インタビュアー田村 次朗(たむら じろう)

    慶應義塾大学法学部教授

新しい人材採用のサービス

──末藤さん、素晴らしいご活躍ですね。まず大変勢いのあるスタートアップ、Visional での現在のお仕事についてお聞きします。HR(ヒューマンリソース)Tech(テクノロジー)というものはどういうものなのでしょうか。

末藤 当グループVisional は主要事業としてHR Tech領域のサービスを提供していますが、グループ全体では、「新しい可能性を、次々と。」をミッションに掲げ、テクノロジーを活用して、様々な産業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進していこうとしています。

HR Techの領域では、即戦力人材と企業をつなぐ転職プラットフォーム「ビズリーチ」が主要サービスです。以前であれば、転職を考える際、エージェントの方々に相談して、そこで示される転職先しか知り得なかったものが、プラットフォームに登録することで、自身のキャリアの選択肢と可能性を可視化できるサービスです。その他にもM&A領域のDX「ビズリーチ・サクシード」や、物流領域のDX「トラボックス」など、様々な事業を展開しています。

──ビズリーチは面白いコマーシャルをやっていますよね。外資系企業からスタートアップに転職された理由はなんだったのでしょうか。

末藤 私自身今まで3回転職して、現在4社目なのですが、実は一度たりとも積極的に会社を辞めたいと思ったことはありません。どれも人との出会い、ご縁で会社を変えています。今回も、前職GSK(グラクソ・スミスクライン)という製薬会社でお仕事をしている際に、偶然、弊社代表の南とパネルディスカッションで一緒になり、そのご縁で誘われました。

スタートアップに、なぜ入ったのか。1つはずっと外資系企業でキャリアを培ってきたものの、将来いつかは日本の会社に入りたいと思っていました。それは自分の生い立ちにも関係しますが、日本の社会を何らかの形でよりよくするお手伝いをしたいという思いがありました。

また、スタートアップに挑戦するのであれば最後のチャンスと思い、40歳になる目前で転職しました。急成長していて変化を恐れずに楽しむ会社のように見えたので、この会社がどんどん大きくなり、日本を代表するスタートアップの一社になるために、今までの経験が生かせたらと思いました。

CFOとCAOの役割

──最近、横文字の肩書きが多くなっていますが、CFOとCAOという役割をご説明いただけますか。

末藤 CFO(Chief Financial Officer)は日本語では最高財務責任者と訳され、財務本部長のように言われる職務です。CAO(Chief Administrative Officer)は管理本部長などでしょうか。CFOは財務の観点から事業の攻めと守りを、そしてCAOは、会社のガバナンスや生産性という観点から事業を支援する職務だと捉えています。

つまり、CFOは会社が事業展開する際に経営資源の配分をどうするのが最もいいか、また例えばコロナ危機のような時に会社を守るために何をすればいいのかをお金の面から考える。一方、CAOは、法務やコンプライアンス、総務のような分野が管轄で、皆さんを支え、ビジネスを正しく進めるための支援をしています。

──財務から法務、総務、重要なところを全て見ていらっしゃる人ですね。一方、これからの転職市場はどのようになっていくと思われますか。

末藤 転職市場は、この10年2桁成長を続けています。定年まで1社で勤め上げるという時代から転職がタブーではなくなってきたことで、雇用の流動性が上がってきている。実際に、アメリカでも製造業が主要産業だった時代には終身雇用が主流でしたが、サービス業へとシフトするのに応じて雇用の流動性が拡大しており、日本も同じ道をたどっていくと考えています。

また、テクノロジーの進化によって企業寿命は短くなっています。よって、日本でも、終身雇用を前提とせず自分のキャリアをより主体的に選ぶようになっていくことで、さらに市場は拡大していくと思います。

でも、私は終身雇用も決して悪いとは思っていません。会社の中で様々な役割を経験し、そこで自己成長、自己実現ができるのであれば転職をする必要はないと思います。転職は、すごく労力がかかりますし、自分のブランドや仲間を1からつくらなければいけないという面もありますので。

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