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野澤 武史:「スポーツを止めるな」でコロナ禍の高校生を応援
2020/10/15
一般社団法人の創設
──「スポーツを止めるな」は7月20日に一般社団法人を作り、いろいろなプロジェクトも始まっていますね。
野澤 今回、実際にあらゆるスポーツが驚くべき止まり方をしている。これが5年も10年も続いたら、本当にスポーツ選手を目指す子がいなくなるんではないかという危機感があります。
現在行っている大きな柱は3つです。まず、先ほど紹介した、「選手が安全にプレーをアピールできるシステムの開発」。今まではSNSを使っていましたが、それをよりクローズドな場所に作りたいと思っています。
また、「青春の宝」というプロジェクトがあります。これは、コロナで大会や試合がなくなってしまった子たちの高校最後の試合や自分のベストゲームに、プロが実況解説をつけてプレゼントしてモチベーションアップしてもらうものです。そうやって、30年後の同窓会で「あれを見てみようぜ」と言えるものをプレゼントする。
それから、「現代を生きる力をつける教育プログラム」というものをやっています。学校現場では教えられていないことはたくさんあると思います。学校が「SNSを使うな」という理由は、自動車事故を起こしたくないから運転するなというのと同じですよね。
でも、どうやって使っていくべきなのか。リスクとリターンについては、大人になってから痛い目を見て学ぶのではなく、中高生のときに先生の庇護の下に学んだほうがいいはずです。そのように本当の生きる力というものを、業界のトップとアスリートとの対談を見てもらうことで身近に感じてもらう試みを始めています。
また、共同代表をやっている後輩の廣瀬俊朗君は、香川県の高校で、部活横断のリーダーシップ教育の授業を開催しました。文化系・体育会系部活が垣根を超えてリーダーについて考える。これもコロナがなければおそらく実現しなかった企画でしょう。
「利他心」を活動の基礎に
──一般社団法人にしたのはどういった理由ですか。
野澤 資金調達も含めて、継続的に責任を持ってやっていこうということです。きっと、僕らの頭の中には元々「スポーツを止めるな」マインドがあって、それがコロナによって顕在化されただけなのだと思います。
ある意味ではコロナがスポーツに横串を刺してくれたと感じています。今まではバレー界にはバレー界の、ラグビー界にはラグビー界の常識があって、各団体の間には壁があり、他の競技の人と話すことはほとんどなかった。ところが、今回いろいろと話していくと、ここが変だよラグビー界、ここが変だよバレーボール界みたいなことにだんだん話が及ぶんです。
また、「スポーツを止めるな」は駆け出しのソーシャルベンチャーなので、一番の課題は応援してくれる人を増やしていくことです。この活動に賛同してもらった個人や法人からの寄付を土台に、活動を成り立たせたいと思っています。
コロナがいつ収まるのか誰もわかりませんが、この危機が終わっても継続的に活動していきたい。スポーツ界自体がより開かれたものになっていってほしいし、選手がより自分らしく輝いてほしい。ここが僕が大事にしたいところで、その課題意識を解決するまで走ってみたいと思います。
──野澤さんは、どういうところにスポーツの力を感じますか。
野澤 1つは、利他心ですね。ラグビーでは当たり前ですが、孤立している選手がいたら、自分がどんなに疲れていても、トップスピードで助けに行く。
こういう活動は、何か見返りを求めてしまうと動きにくくなる。なぜ、この活動をするかと言えば、まさに利他心、自分たちの目的、使命感だと思うんです。そこに照準を合わせないと、活動領域が無限になって活動がぶれてしまうんですね。
一方、この活動は親父たちの青春でもあるんです(笑)。毎週水曜日のオンライン定例会では、夜中まで皆で、ああでもないこうでもないと議論する。こういうことは、大人になったらなかなか機会がない。だから、徹底的にギブにこだわっている活動ですが、実は、われわれも学生アスリートからギブされているんだなと感じます。
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