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秀島 史香:ラジオにこだわり続けて文化庁芸術祭賞を受賞
2020/06/15
人の気配を感じられるラジオ
──これからはIoTの時代だと言われていますが、ラジオというものは音声だけを一方的に提供する、限られたメディアです。今後、ラジオにこだわり続ける秀島さんとしてはどのような道を目指していきたいですか。
秀島 メディアの形は新しいものがどんどん出てきますが、ラジオというものはシンプルに「音だけ」だからこその強みがあると思うんですよね。何かをしながらでもできたり、「耳だけは空(あ)いている」とよく言うのですが、例えばSNSとラジオの相性もとても良く、競合しない。発信者である我々とリスナーさんとの縦のつながりだけでなく、リスナーさん同士が同じ番組を聴いて、ツイッターなどでどんどん横につながっていくことが多々あります。
ラジオにはまだ余白がたくさんあると思うんです。つまり、受け手一人一人が、自由に自分がやりたいことをラジオと共にできるということです。昔から学生は深夜放送を聴きながら勉強していましたし、今はSNSをチェックしながらラジオを聴くという楽しみもあります。私たちラジオ側の人間も「何かと一緒に聴くとより楽しい」という音声コンテンツとしてのあり方も模索しています。
──確かにそうですね。
秀島 他媒体とのコラボレーションの自由度が高いことに加えて、純粋なラジオだけの楽しみもあります。人は想像力でいろいろなものを思い浮かべて楽しむことができますよね。あらゆるものが「見える化」しても、やはり、見えないからこそ思い浮かべて楽しむことは失われないと思います。
特に今は新型コロナウイルスの影響で、見えないものに対して必要以上に不安に思ってしまうということがありますよね。でも、見えないからこそ明るい一声でポジティブな気持ちになったり、想像を広げたりもできる。
例えば誰かの「おはようございます」の声で、こんなにも心が軽くなるのだと私自身、1リスナーとして日々感じています。そのイマジネーションの力は、人間である以上、これからも絶対になくならないものだと思います。
私が最初にラジオっていいな、人の声っていいなと思ったのは、見えないけれどそこに誰かがいる気配でした。その生の気配というものは、やはり人が必ずそこにいなければ生じないものです。今後、技術はますます進歩していくのでしょうが、これこそがラジオの大切な心臓部分なのではと思っています。
ということで、番組のエンディング挨拶のようになってしまいますが(笑)、今はスマホでもパソコンでもラジオが聴ける無料サービス「ラジコ」もあります。疲れた時、寂しい時、ちょっとスイッチをつけてみてください。これからも明るい想像とホッとできる時間をご一緒できたら幸いです。
──「秀島史香は生涯DJ」という結論になるのではないかと思うのですが、とてもよいお話を伺いました。ますますの活躍を期待しています。今日はどうもありがとうございました。
(2020年4月9日、オンラインにより収録)
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。
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